日時 | 2025年7月24日(木) |
場所 | 東京文化財研究所 地下セミナー室 |
<趣旨>
多くの素晴らしい日本美術の名品が北米、ヨーロッパなど海外の美術館、博物館で所蔵されていますが、昨今、海外では展示などで日本美術作品が活用される機会が減りつつある傾向にあります。
日本の絵画、書跡などの作品が活用されにくい要因のひとつとして、日本と海外での展示期間の考え方の違いがあります。日本では国宝、重文などの絵画、書跡は保存のために1年間に4~8週間以内という展示制限があり、通常は4週間の展示のあとに、作品を休ませています。これに対して、海外では、いったん展示すると、基本的に展示替えはあまり頻繁に行わず、数か月あるいは1年くらいの期間、展示した後、5年あるいは10年程度展示しないローテーションとなる場合が多くあります。
とくに、最近ではビゾ・グリーン・プロトコールのように、美術館等でも環境的に持続可能な方法でコレクションを長期的に管理するという流れが提唱され、輸送による二酸化炭素総排出量を削減するために、展覧会会期の延長が望まれる方向にあります。
日本の関係者からは、これまでの古美術の取り扱い経験から、長い展示は軸装等の作品に負担がかかり、色材が心配であるという感触を持つ意見が少なくありません。一方、海外では、数か月の展示を行っても問題ないという経験がすでにあるなか、この日本式の短い展示期間が必須とされることに対して、「慣例」や「感覚的な説明」だけでなく、明確な根拠を求められることが多々あります。しかし、現状では科学的な説明が十分にできているとはいえません。
そこで、本科研では、2022年度より、海外機関の日本美術のキュレイターやコンサバターに対して、展示、収蔵、保存のポリシーに関する詳細な聴き取り調査を開始しました。
これとあわせ、科学的なデータを取得するために、展示期間の長さや環境条件などを変えた場合に軸装絵画等(掛軸)にかかる物理的な負荷の状況調査を3D計測により行いました。さらに光による日本絵画の色材への褪色リスクの評価について、本科研と関連する国際共同研究加速基金において、2023年度からカナダ保存研究所(Canadian Conservation Institute: CCI)と共同研究を開始しています。
本研究会では、以上の科研の概要を共有するとともに、今後、どのような取り組みをしていくべきか、議論していきたいと思います。
関係者の皆様の積極的なご参加をお待ちいたしております。
<お申し込み方法>
下記のリンクあるいは右の二次元コードより、お名前、ご所属、メールアドレスをご記入のうえ、2025年6月22日までにお申し込みください。
https://forms.gle/BFi71hopmMZbC7448
<プログラム(案)>
10:00~ | 開会挨拶 国立文化財機構理事長・皇居三の丸尚蔵館長 島谷 弘幸 |
10:10~ | 本研究プロジェクトと研究会の趣旨および構成について 事務局(木川 りか) |
10:25~10:55 |
北米、欧州の博物館等における展示、収蔵、保存のポリシーの聴き取り調査(仮題) 東京文化財研究所 保存科学研究センター副センター長 早川 典子 |
10:55~11:25 |
北米、欧州の博物館等における日本絵画等の修理の取り組みについて 株式会社 岡墨光堂 代表取締役 岡 岩太郎 |
11:25~11:45 | 質疑応答 |
<昼休憩> | |
13:00~13:40 |
検証実験について (1)異なる温湿度環境、展示計画が掛軸の形状に与える影響の調査 (2)日本絵画に使用される染料等の光褪色実験の目的 九州国立博物館 博物館科学課長 木川 りか |
13:50~15:20 |
(1)CCIにおける日本絵画に使用される染料等の光褪色実験 とデータの活用(仮題) (2)光褪色した染料の成分分析(仮題) Canadian Conservation Institute (CCI), Conservation Scientist Eric Hagan (*逐次通訳付き、途中小休憩5分をはさみます) |
15:40~16:40 |
総合討議 司会:九州国立博物館副館長 小泉 惠英 パネリスト:島谷 弘幸、Eric Hagan、早川 典子、岡 岩太郎、木川 りか |
16:40~ | 閉会挨拶 東京文化財研究所 所長 齊藤 孝正 |