東京文化財研究所 > 第37回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会
第37回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会
「かたち」再考 ―開かれた語りのために―
要旨
セッション1:群れとしてのかたち
複数の物に同種のモチーフや型といった「かたち」が現れることがあります。その共通性に着目するとき、ある特定の「かたち」が同じ意味や機能を保ちながら伝播・拡散・継承されてゆく場合もあれば、逆に全く別の意味や機能に変化することもあり、さらには、お互いが全く関連性をもたない場合もあります。また個人様式や時代様式、地域様式といったものも、個々別々の「かたち」を、一群として扱うことで浮かび上がります。
このように「かたち」の共通性に着目することは、学としてごく一般的なことなのです。しかしそうであるだけに、分野ごとにその方法論を磨き上げると同時に、他分野へも語りを開くことが重要になります。このセッションでは各分野における「かたち」へのアプローチの方法をつきあわせ、その一般的な営為の内実を問い直したいと思います。
|
|
セッション2:個としてのかたち
ある作品に魅かれるとき、わたしたちが強く感じるのは他の「かたち」との共通性よりもむしろ、そのとびぬけた特異性でしょう。時代から超絶したかのような異色の作であれば、その隔たりはなおのこと強く感じられます。そのような突出した「かたち」は、他の「かたち」との連関はもちろん、同時代のコンテクストと結びつける歴史的な語りを容易には認めてくれません。
このセッションでは、そうした個々の「かたち」のもつ特異性にあえて注目します。普遍的に通用する法則を見出そうとする学のあり方とはなじまないかもしれませんが、いわゆる名品・名作に彩られた芸術を対象とする学において、特異性と普遍性との相克は避けて通れない課題のはずです。個々のユニークな「かたち」を対象としながら、どのようにすれば開かれた語りが可能なのか、その術を模索したいと思います。
|
|
セッション3:かたちを支えるもの
「かたち」を構成する材料、「かたち」を可能たらしめる技術や道具、「かたち」の背後にある個人ないしグループの知識や思想、身体性、社会の風潮や政治状況といったコンテクスト、あるいはそれらを超越したほとんど偶然としか言いようのない何ものかなど、さまざまなものに支えられて、「かたち」はある時に人によって生み出され、その時々の人によって認識されます。
このセッションでは「美術」の諸ジャンル、時にはその領域さえも乗り越えて「かたち」の問題へアプローチしようとする研究を集めます。現物にせよイメージにせよ、「かたち」を認識することから出発して、「かたち」の周辺へと考察をひろげ、それから再度「かたち」の問題へ立ち戻る。いくつかの事例を集めることによって「かたち」の問題のもつひろがりを浮き彫りにするとともに、そうした方法論そのものの可能性と課題についても掘り下げて議論してみたいと思います。
|
|
|
|
