無形文化遺産部では、無形文化遺産における新型コロナ禍の影響を継続的に調査しています。その中で、古典芸能を中心とした無形文化財(伝統芸能) への影響については2020年4月より情報収集を開始しました。情報は「関連事業の延期・中止情報」、「新たな試みの情報」、「再開関連情報」の3つの観 点から収集し、現在も収集作業を継続中です。
このたび、新型コロナ禍が伝統芸能関係者に与える影響は甚大かつ深刻であると捉え、9月6日までに収集した「関連事業の延期・中止情報」の概要を表、グラフとして公開します。現在、月に一度程度の更新を継続しています。
ただし、このデータはあくまで関連事業の延期や中止が「表明された」情報に基づいています。したがって、例年計画されている公演(定期公演・興行の類) が、そもそも公演予定を公表することもできないまま中止・延期された場合は含まれていません。これらの情報の収集・分析は別途検証したいと思います。今回 より、再開関連情報を追加していますので、今後の推移にご注目ください。
なお、収集している情報は全てすでにウェブ上で公開されている情報です(主な情報源は以下をご覧ください)。

注:④-1、④-2のグラフの数値を一部修正しました(2020.10.01更新)

・ 主な情報源

独立行政法人 日本芸術文化振興会HP
歌舞伎美人HP(松竹株式会社が運営する歌舞伎公式HP)
公益社団法人 全国効公立文化施設協会HP(正会員のHP)
公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会HP(正会員のHP)
『邦楽の友』公式FB
紀尾井ホールHP
その他、実演家および実演家団体の公式HP、FB

 

① 関連事業の中止・延期/再開件数〈形態別〉

– 新型コロナウイルス禍を明記した中止・延期は2020年2月末から現れはじめ、現段階で2021年2月の中止・影響を表明しているものもある。
– ②以下のグラフでは、実演を含む事業を取り上げた。
– 再開事業の割合は、公演が8割弱にとどまっている一方で、実演を含まない展示が18%と目立つ。人の接触が比較的少ない事業から再開していると思われる。

 

 

② 実演の中止・延期件数/再開件数〈月毎の推移〉


– 中止・延期件数(青線)が6月より目立って減少すると同時に、再開件数(赤線)が増え始め、8月には両者が逆転している。10月以降に再開件数が減っているのは、これから再開予定が公表されるためであろう。

 

 

③-1、③-2 実演の中止・延期/再開件数〈都道府県別〉

– 中止・延期、 および再開件数は、東京都の件数が飛び抜けて多く、続く大阪府や京都府と大きな差がある。

 

 

④ 実演の中止・延期/再開件数〈ジャンル別〉

– 中止・延期も再開も、一定期間興行を行う歌舞伎の件数が多いが、再開件数の26%を能楽が占めているのは、再開時期が比較的早かったことを反映しているとも見て取れる。出演者の連名から主たるジャンルを3つまで入力し、足し上げて集計した。

 

 

⑤ 実演の中止・延期/再開件数〈会場規模別〉


– 再開に関しては、100~500席以下に席数を制限しての件数が全体の52%を占めている。

 

 

⑥ 実演の中止・延期/再開件数〈国指定重要無形文化財の割合〉

– 国指定重要無形文化財の保持者・団体の認定には「各個」「総合」「保持団体」(現在、芸能の認定なし)がある。中止・延期された実演の出演者に各個認定の 者が含まれていれば「各個」、「総合認定」されている団体の構成員が含まれていれば「総合」、両者が含まれていれば「各個+総合」とした。
– 未指定の公演が、中止・延期件数に対する割合53%、再開件数に対する割合39%となっていて、中止・延期の影響を受けやすかった上に、再開が進んでいない可能性がある。

 

 

*参考:2020年 6月30日更新分の過去のデータ8月11日更新分の過去のデータ