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記録で守り伝える無形文化遺産
エントランスロビーパネル展示 : 2021年6月4日~ (終了しました)

無形文化遺産と記録

 2019 年末に始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、無形文化遺産にも大きなダメージを与えています。多くの無形文化遺産が、存続の危機に立たされました。ただ、そうした危機は感染症ばかりが原因ではありません。例えば後継者不足や経済的な要因、災害やライフスタイルの変化等によって、消えてしまう伝承は数多くあります。
 無形文化遺産は、人が伝えていくものですから、一度絶えてしまうと、復活することは難しくなります。そんなとき、記録にとどめておくことが、後世に伝える唯一の手段となるわけです。
 もちろん、廃絶前提の記録ばかりではありません。無形文化遺産は常に変容していくものですから、現状を記録しておくことも、大切な作業です。また記録することによって、さまざまな分析や研究が可能になります。さらには記録を公開することによって、多くの人がそれを知るところとなり、愛好者が増えることで伝承が強化されるという効果なども期待できます。
 また記録の対象となる要素も様々です。例えば芸能であればその所作や演奏などが、工芸であれば作る技が記録の主体となります。しかしそれだけではなく、そこで用いられる道具や原材料について、あるいは背景となる環境や生活まで記録することが必要になる場合もあるでしょう。
 東京文化財研究所では、そうした無形文化遺産の保護・活用の観点から、さまざまな記録作成を行っています。特に映像記録に関しては、何をどのように撮影するのか、知何に表現するのかという方法論を構築し、アーカイブ化することを検証しています。

令和3年(2021)6月
東京文化財研究所 無形文化遺産部
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