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文化財の光学的調査と記録の継承
エントランスロビーパネル展示:2018年6月1日~(終了しました)

(写真撮影:城野誠治)
平等院の光学的調査と記録の継承
 京都府宇治市に位置する平等院は、永承7年(1052)、時の関白藤原頼通が、父の道長より譲り受けた別業を仏寺に改めたものです。その翌年の天喜元年(1053)に阿弥陀堂(鳳凰堂)が落慶し、堂内中央には仏師定朝によって制作された丈六の阿弥陀如来坐像が安置され、長押上の小壁には52体の雲中供養菩薩像が配され、壁扉面には観無量寿経に基づく九品来迎図が描かれました。平安時代後期、日本では「末法思想」が広く信じられており、永承7年(1052)はまさに末法初年に当たると考えられていた年でした。鳳凰堂と堂内の阿弥陀仏、壁扉画、供養菩薩像、さらに周囲の庭園などは、西方極楽浄土を観想するための現世の極楽浄土として造られたと考えられます。
 平等院には建造物、絵画、工芸品、史跡・名勝など数多くの文化財が存在し、これまでに幾度となく修理・改修・整備が重ねられて、現在の姿に至っています。鳳凰堂や阿弥陀如来坐像などは昭和26年(1951)に国宝に指定され、平成6年(1994)には平等院の寺域全体が「古都京都の文化財」の構成資産のひとつとして世界遺産一覧表に登録されました。
 東京文化財研究所では、昭和初期から現在に至るまで、平等院に関するさまざま調査研究を断続的に行ってまいりました。平成14年(2002)からは最先端の光学機器を用いた調査研究に取り組み、絵画や工芸品の材料・技法等に関する研究が現在も継続されています。また、平成26年(2014)からは鳳凰堂内の文化財や環境に関する包括的な調査協力・助言も行うようになるなど、長年にわたり平等院の保存・継承に寄与してきました。さらに、これまでの修理等に際して記録された図面や写真、さらには再利用されずに保管されている木材や金工品等に関する記録撮影についても積極的に取り組み、特に平成28年(2016)年からは平等院内外に保管されてきたガラス乾板のデジタル化を進めています。このように、かつての平等院の姿を後世に伝えるために、正確で明瞭なデジタル写真の撮影とその継承に取り組んでいます。
 ここでは、平等院の文化財に対して、最近の光学調査によって明らかになった研究成果の一部をご紹介致します。

平成30年(2018)5月
独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
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