空をおよぐクジラ
室蘭神楽/北海道室蘭市

空をおよぐクジラ/室蘭神楽/北海道室蘭市

 なんだろう、このまっくろな獅子舞みたいのは。写真では切れているけれど大きな尻尾もついていて、ゆったりと舞っている。そう、これはクジラなのだ。その名も「鯨神(げいしん)の舞」。明治のはじめ、漂着したクジラを売って神社の創建費用にあてたことに由来するという。

メモ 室蘭神楽は、8月15日を中心としたの室蘭八幡宮例祭などで演じられる。新潟県の三条神楽が伝わったものとされるが、もちろん「鯨神の舞」は室蘭オリジナル。祭りの間は、神輿や盆踊りにビアガーデンなどいろいろと楽しむことができる。

室蘭の名物は「室蘭やきとり」。やきとりっていうけど、豚肉とタマネギなんだにゃー。

ありがたきゴールデンヘッド
大日堂舞楽/秋田県鹿角市

ありがたきゴールデンヘッド/大日堂舞楽/秋田県鹿角市

 ぴっかぴかのゴールデンヘッドがまぶしい。この「五大尊(ごだいそん)舞」に登場する6人のうち、2人がゴールドだ。2人は宇宙を司る大日如来の役であり、また同時に「だんぶり長者」という伝説に登場する長者夫婦をも表しているともいわれる。大変ありがたいマスクなので、つけるときも素手で触ることは許されないのだ。

メモ 大日堂舞楽は、大日霊貴(おおひるめむち)神社で、1月2日に演じられている。「五大尊舞」以外にも、様々な珍しい舞が繰り広げられる。八幡平駅から歩いてすぐとアクセスはいいのだが、午前中の開催なので、盛岡などから行くには早起きが必要だ。

鹿角は、きりたんぽ発祥の地といわれているのにゃ。寒い冬に食べるきりたんぽ鍋は格別!

あんなぁ、この餅ほんまにうまいで~
観菩提寺 正月堂の修正会/三重県伊賀市

あんなぁ、この餅ほんまにうまいで~/観菩提寺 正月堂の修正会/三重県伊賀市

 鬼らしい。鬼なんだけれど、なんだかかわいらしい。シュロの頭にミカンの目玉。眉・鼻・口まわりは栗だ。その鬼がのっかっている「大餅」と呼ばれる餅も、なんだかカーリングができそうな大きさだ。修正会は千年以上続くという正月行事。鬼が出てくるのも、大きな餅を供えるのも、春を迎えるこの行事の一部なのだ。

メモ 2月1日におこなわれる。午後、鬼頭や大餅が運び込まれた後、福餅まきがある。翌日は「おこない」と呼ばれる法要がおこなわれ、東大寺二月堂(奈良県)のお水取りと同じような、重要な儀礼がおこなわれる。

伊賀のお菓子といえば「かた焼き」。おいしいけど、かたすぎて歯が折れないよう注意にゃ。

森の神さまの大きなイヤリング
船引町のお人形様/福島県田村市

森の神さまの大きなイヤリング/船引町のお人形様/福島県田村市

 森の中にでっかい神さまが立っている。背丈は4メートルほど、顔だけで1メートル以上ある。この地域に疫病が流行したことで、悪霊がやってこないように立てるようになったという伝説がある。確かに悪霊も帰りたくなるコワモテだ。ただ、なぜか大きなイヤリングをつけているお洒落さん、と思ったらどうやらこれは耳を表現しているらしい。

メモ 船引町の屋形・朴橋・堀越の3地区でつくっている。いついっても見ることができるが、毎年4月に人形を新しく作りかえるので、作るところを見たければ、そのときに行くのがよい。近くには滝桜で有名な三春もある。

三春にある高柴デコ屋敷では、三春駒や、かわいらしい三春張子が買えるのにゃー。

本当にそのお面でいいんですか
有川神楽/長崎県新上五島町

本当にそのお面でいいんですか/有川神楽/長崎県新上五島町

 長崎県の五島列島には、あちこちで「五島神楽」が舞われている。上五島ではこれを舞うのは、基本的に神社の神職さんたちだ。ただ、いくつか一般の人が舞うものもある。この「五方の舞」も、担当するのは地元の女子中高生。しかしそのお面がどうにも妙だ。このときは、縁日のお面屋で売っているような、プラスチックのぺかぺかのお面を使っていた。もちろん、ほかの舞は立派な面を使っている。

メモ 五島神楽は、おもに福江島(五島市)と中通島(新上五島町)で、9~11月にかけての秋祭りで演じられている。だいたい前夜祭にお神輿が出て、夜になったら神楽。翌日の例大祭では日中に神楽が演じられるという日程。祭りは、子供たちも集まってにぎやかだ。

ハコフグのおなかに味噌をつめて焼いた五島名物「かっとっぽ」、おいしいのにゃ~。

鹿なのか、本当に鹿なのか?
徳山の鹿ん舞/静岡県川根本町

鹿なのか、本当に鹿なのか?/ 徳山の鹿ん舞/静岡県川根本町

 鹿だ、それもけっこうリアルな鹿だ。東北地方には鹿踊りという鹿のカシラを被った踊りがたくさんあるけれど、こういうリアルな鹿はほとんど見られない。しかしよくよく見れば、本当にリアルなのか。口がこんなにがばっと開いていて、しかも歯がずらっと並んでいるというのはあり得ない。でもまあ鹿なのだろう。お盆の時期、男子中学生によってこの鹿ん舞は演じられる。ぴょんぴょんと飛び跳ねる様は、たしかに鹿っぽい。

メモ SLが走ることで知られる大井川鐵道の駿河徳山駅。駅から少し歩いた浅間神社などで8月15日の祭礼に演じられている。鹿ん舞のほかに、女子小中学生が担当するヒーヤイ踊りや大人が演じる狂言、さらに趣向をこらした花火もあって夏の夜を楽しむことができる。

川根といえば、なんといっても川根茶。神社の近くも茶畑が広がっているのにゃー。

正体不明の黒いやつ
西表島の節祭/沖縄県竹富町

正体不明の黒いやつ/西表島の節祭/沖縄県竹富町

 全身黒ずくめだ。まっくろ黒すけ、なんてかわいいものではない。白い砂浜を静かに歩く姿は異様だ。西表島、祖納の「節祭」に登場するこの黒いやつはフダチミといい、女踊り(アンガー)の一行を率いる。どうしてこんな黒づくめなのか実はよくわからないのだが、高貴なお姫様だから身を隠しているなどという説もある。節祭がおこなわれるのは新暦でいえば10~11月の時期。南島ではこのときに新たな年を迎えるのだ。

メモ 西表島の祖納の「節祭(しち)」。旧暦10月前後の己亥の日から3日間というから旧暦カレンダーをチェック。フダチミが出るのは祖納だが、隣の星立(干立)の節祭も同日に行われる。だいたい時間がずれるので両方見ることができる。星立の方はオホホと呼ばれる変わった役が出るのが見どころだ。

節祭のお料理といえばバラピ。ヒカゲヘゴという木を切って煮るそうだにゃー。

高速回転ヘッドバンギング
黒内田植踊/岩手県岩手町

高速回転ヘッドバンギング/黒内田植踊/岩手県岩手町

 カラフルだ。後ろの幕とも統一されたカラーリングがなんとも美しい。しかし踊り始めれば、驚愕のパフォーマンスが展開する。頭を激しく回転させ、笠についたひらひらの布が舞い上がる。まるでヘッドバンギングだ。この踊り、岩手県内に多くみられる「田植踊り」という豊作を願うもの。昔は少女がやっていたというが、後に青年が担い、さらに近年はおばさまたちが踊るようになった。しかし、一度見たら忘れられない踊りだ。

メモ かつては冬に招かれた家の座敷で踊ったものだが、いまはイベントでなければなかなか見られない。民俗芸能大会のようなものから、地元のスーパーのイベントまで開催情報をチェック。

「がんづき」を知っているかにゃ。岩手では昔からつくられていた蒸しパンなのにゃー。