調査ノート1

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田中一松は九条家旧蔵の襖絵を屏風に改めた本作品を昭和2年(1927)と翌年に調査しています。昭和3年(1928)のこの調査では、人物や樹木の表現、作品の損傷状態などを詳細に観察し、画面の改変や後補部分が認められることから「伝山楽」と判断しています。田中はこの車争図を、昭和2年の7月21日と、この昭和3年9月22日に調査しています。昭和2年の調査では、「山楽筆車争図」として、何がどのように描かれているかについて記録し、補筆が多い点を指摘していますが、昭和3年の調査ではさらに損傷について詳しく観察し、補筆や補紙が多いことからどこまでが原初のものか定かでないとし、「伝山楽」としています。絵の全体の寸法だけでなく、縦の紙継の長さも計測しています。
調査ノート2

前ページからの記される人物描写の特徴に続き、牛車、樹木、家屋の表現について、記述されています。また左側から一扇ごとに構図や描写内容が記されています。
調査ノート3

この作品が源氏物語絵として平安朝風でありながら、そこに桃山風俗がちょいちょい混ざっている、というのは興味深いコメントです。田中はこの作品の画風を狩野派と認めつつも、どこがどの程度オリジナルのもので、後世の補筆がどのように入っているのか、見極めようとしている姿勢が見受けられます。