斎藤たま氏(1936~2017)は1970年代から日本全国の野辺歩きをとおしてさまざまな民俗事例を採録し、多数の著作を発表した在野の民俗学者です。
関心は植物、動物、まじない、遊び、言葉、年中行事、人生儀礼など多ジャンルに及び、いずれも暮らしに身近で、ややもすると見逃しがちな民俗を対象としてこられました。これらの中には、現在では失われてしまった民俗事例も数多くあります。

たま氏は採集した民俗事例を丁寧にカード化し、蓄積してきました。東京文化財研究所では、これらの調査カード約5万5千枚を2017年にお預かりし、後世の私たちが利用しやすいようにアーカイブ化事業を進めています(詳しい経緯についてはこちら)。
2021年2月からは、ご遺族のご厚意により、その成果の一部公開もはじめています(公開中のデータおよび作業進捗状況についてはこちら)。

調査カードに記されたひとつひとつの情報は些細で小さなものにすぎません。しかし、それが集積された時に見えてくる世界はきわめて豊かです。
アーカイブの公開により、たま氏の功績にふたたび光があたるとともに、豊かな民俗世界の実態についてさらなる理解が深まることを期待したいと思います。

斎藤たま 民俗調査カード集成 リンクはこちら

たま氏の5万5千枚におよぶ調査カードのアーカイブ(随時更新中)

 

斎藤たまの遊び唄 2023.9 公開開始!

国際あやとり協会会員の宍戸行夫氏が依頼し、たま氏ご自身が録音した遊び唄の音源

 

未発表原稿「縄の民俗」 リンクはこちら

国際あやとり協会会員の宍戸行夫氏が保管しておられた、たま氏の未発表原稿
※ たま氏は1999年から国際あやとり協会会員の協力のもと、数年かけて「あやとり」に関する記録をまとめ、2004年にはあやとり協会の会誌『BISFA Vol.11』として刊行されています。2022年には日本語版『BISFA Vol.11 日本の伝承あやとり』(斎藤たま著、宍戸行夫編)も刊行されました。

 

斎藤たま氏(1988年)
ご家族提供