米どころ“東北”は、米を食べていたのでしょうか?

自分で作っていたのだから、さぞかしたくさん食べていたかと思いきや、戦後の食糧配給制度が始まるまでは、必ずしもそうではありませんでした。
農家の人々にとって、お米は大切な現金収入源でしたので、ふだんは麦や根菜類といった“カテ”を米に混ぜ、かさ増しをして食べていたのです。

それをモノ語る民具が、東北を中心に分布するローカル民具「カテキリ」です。
まずはご覧いただきましょう。

カテキリ “みじん切り用”(登米市教育委員会所蔵)

一瞥しただけではどのように使うのかわかりにくいかもしれません。 実はこのカテキリ、ハンドルを下ろすだけで一気に大根の3Dカットができるスグレモノなのです。

作用部をアップにしてみましょう。

カテキリ “みじん切り用” 部分拡大
(登米市教育委員会所蔵)

大根を輪切りにする包丁のような刃、細く筋状に切るための櫛のような歯、大根のカーブにフィットするような斜めの歯、これらがハンドルに連動して動くことで、大根が“みじん切り”になります。

それぞれの軌跡を思い描いてみてください。縦・横・斜めの刃(歯)によって切り出される形は“サイコロ状”ではなく…そう、“ひし形”ですね。
これは想像の域を出ませんが、“サイコロ状”よりも“ひし形”の方が米粒に近い口当たりになったのかもしれません。あたかもお米を食べているような気になれる、大根の調理法。日々を楽しく生きるための工夫が感じられます。

実はこのカテキリ、デチューンされた“千切り”モデルも発見されています。

カテキリ “千切り用” 部分拡大
(登米市教育委員会所蔵)

千切りくらいなら手で切ればいいではないかとお思いになるかもしれませんが、そこはカテキリの快感を知ってしまった東北民、斜めに切る歯を取り除いて、ザクザク千切りにしていたようです。

さらさらに。 大根用を3Dカットするだけでは飽き足らず、“ジャガイモ用”と伝わるカテキリも存在します。
基本的にジャガイモは「芋すり器」でフレーク状にしていましたので、ジャガイモ用のカテキリはあくまでも例外事例ですが…
それにしても東北民、カテキリ大好き(?)ですね。

カテメシ調理器具3種(東北歴史博物館所蔵)

執筆:今井 雅之(東北歴史博物館)
公開:2026年4月1日