神前に供えるお神酒を入れるお神酒徳利(おみきとっくり)。
そのお神酒徳利の口に挿す「かざりもの」が、ミキノクチです。

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全国各地のミキノクチには、精緻に編んだ「竹細工」の他に、「経木細工」や板を切り取ったもの、紙、真鍮などの金属、プラスチックのものまであります。
呼び方も「ミキグチ」「ノシ」「ノシグチ」「ミキカザリ」など、地域によって様々です。


下:経木細工(奈良県下市町)
紙を使ったものは、単に白い紙を丸めて挿す場合もありますが、蛇腹状に折って扇のように広げたものや、折り紙のように折って芯を付けたものなどもあります。
ミキノクチは江戸時代の絵画や文献にも登場し、寛政の時代を生きた戯作者で、浮世絵師の山東京伝(1761-1816)は、ミキノクチが暮れの市で売られている様子や、それを買ってきた町の人の様子を描いています。
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竹細工のミキノクチは、材料にマダケ を使います。
節と節の間を切った丸い竹を小割にして、内側の肉を削ぎ取り、細く裂いてヒゴ状にしたものを編んで形づくられるのです。
東京都の多摩地域は、竹細工のミキノクチが盛んに作られた場所のひとつ。
お正月前になると、雑貨店・神具店の店先や暮れの市に、蛇腹状の紙のものと共に、竹細工のミキノクチが並びます。

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神の加護を願う「明賀(ミョウガ)」、おめでたい「宝船(タカラブネ)」や「万年青(オモト)」、宝珠の玉をモチーフとした「一つ玉(ヒトツダマ)」や「三つ玉(ミツダマ)」などがあり、とても精巧で美しい形をしています。
新しい年を迎える人々は、その年に作られた清々しい香りのミキノクチを買い求めて差し替え、1年間飾っておくのです。

執筆:山本亮子(ミキノクチ研究家)
公開:2025年7月14日
ミキノクチについては「民具の魅力を語る1」でも構造力学の視点からその美しさが語られています。
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