| △白馬会（はくばくわい）の原由（もと）＠それで如何（どう）してもマア色（いろ）の薄（うす）い濃（こ）いと云（い）ふ事（こと）は其国柄（そのくにがら）にも拠（よ）るし其人（そのひと）にも拠（よ）るし何処（どこ）が佳（い）いと云（い）ふ事（こと）はない話（はなし）なんです、其人（そのひと）の好（この）みと云（い）ふ点（てん）があるんですから、それですけれども何（ど）うしても少（すこ）し自然（しぜん）の研究（けんきう）と云（い）ふものが足（た）りないと云（い）ふ事（こと）を非常（ひじやう）に感（かん）じたんですね、それで私共（わたくしども）は先（ま）づ人（ひと）の事（こと）は兎（と）も角（かく）も自分丈（じぶんだ）けハ絵（ゑ）を画（か）くと云（い）ふ事（こと）に就（つ）いてハ境遇（きやうぐう）が面白（おもしろ）くなくてハ可（い）けない、それで研究（けんきう）すると云（い）ふ事（こと）に就（つ）いてハ第（だい）一に自然（しぜん）と首（くび）つ引（ぴ）きでなくてハ可（い）けない、是（これ）から幾（いく）らか技術（ぎじゆつ）の発達（はつたつ）を計（はか）るのにハ友達（ともだち）の間（あひだ）に遠慮（えんりよ）があつては可（い）けない、それ丈（だ）けを必要（ひつえう）と心得（こゝろえ）たのです、それで此時機（このじき）にあつて共（とも）にやらうと云（い）ふ人（ひと）が集（あつま）つたのが即（すなは）ち白馬会（はくばくわい）の因（もと）となつたので白馬会（はくばくわい）の展覧会（てんらんくわい）と云（い）ふのハ即（すなは）ち其結果（そのけつくわ）であるのです＠△種々違（いろいろちが）つた画風（ぐわふう）＠それで能（よ）く此事情（このじゞやう）が判（わか）らない人（ひと）ハ或（あるひ）ハ画風（ぐわふう）に一種（しゆ）の僻（へき）があつて其僻（そのへき）を持（も）つた人（ひと）などが寄（よ）つたと云（い）ふものがあるか判（わか）りませんけれども画風（ぐわふう）があつて寄合（よりあ）つたんぢやないんです、それですから会員（くわいゐん）の中（なか）にも皆種々違（みないろいろちが）つた画風（ぐわふう）の人（ひと）も交（まぢ）つて居（を）りますから言（い）はゞ黒（くろ）みを沢山使（たくさんつか）つて私共（わたくしども）が前（まへ）に感（かん）じて古風（こふう）だと思（おも）つたのをやる人（ひと）もありますし又（また）ハ如其（さう）でない人（ひと）もあります、それから画題（ぐわだい）の選（えら）み方（かた）なども不幸（ふかう）にして死（し）んだ今泉（いまいづみ）と云（い）ふ男（をとこ）などハポンチのやうなものを題（だい）にして画（か）いた男（をとこ）なんです、又会員（またくわいゐん）の中（なか）でハ全（てん）で絵（ゑ）など画（か）かない人（ひと）もありまして唯（た）だ悪口（あくこう）を云（い）ふ人（ひと）もあるんです、其悪口（そのあくこう）と云（い）ふのハ何（なん）ですね、友達（ともだち）の中（なか）に勝手（かつて）な事（こと）を云（い）ふのなんですね、如其（さう）いふのハ非常（ひじやう）に益友（えきいう）なんですね＠△堕落（だらく）しない予防策（よぼうさく）＠それで先（ま）づ白馬会（はくばくわい）と云（い）ふ一（ひと）つの小（ちい）さいなりにも団体見（だんたいみ）たやうなものが出来（でき）て今（いま）の主義（しゆぎ）で推（お）し移（うつ）つて行（ゆ）くに就（つ）いてハ平常友達（ふだんともだち）を訪（たづ）ね彼（か）れ是（こ）れ云（い）ふのハ出来（でき）ないのですから一の研究場所（けんきうばしよ）を拵（こしら）へて平常幾（ふだんいく）らか研究（けんきう）もする、其研究（そのけんきう）と云（い）ふのハ重（おも）に人体（じんたい）に就（つ）いての研究（けんきう）なんです、それが私共（わたくしども）も非常（ひじやう）にむつかしい事（こと）に思（おも）つたと云（い）ふのハ一葉（えう）の油画（あぶらゑ）と云（い）ふが人間（にんげん）を画（か）くと云（い）ふ事（こと）に研究（けんきう）が足（た）らないでハないかと云（い）ふ感（かん）じがあつたのと元来日本（ぐわんらいにほん）の画（ゑ）に是（これ）が欠（か）けて居（ゐ）たのと油画（あぶらゑ）で人間（にんげん）の絵（ゑ）を画（か）いて少（すこ）し形（かたち）が出来（でき）ると満足（まんぞく）すると云（い）ふ風（ふう）がありますから其点（そのてん）に落（お）ち込（こ）んで行（ゆ）かない予防策（よぼうさく）であつたんです、それで其左様（そのさう）いふ所（ところ）が出来（でき）たものですから書生（しよせい）の稽古（けいこ）したいと云（い）ふ者（もの）があつて同（おな）じ事（こと）ですから研究（けんきう）すると云（い）ふ事（こと）にしたのですね、初（はじ）めハ天真道場（てんしんだうじやう）と云（い）ふ名（な）を附（つ）けたのです、マア自然（しぜん）を基（もと）にしてやると云（い）ふので始（はじ）めたのです、それが今（こん）日になつて漸次（だんだん）二ケ所（しよ）も三ケ所（しよ）もやるやうになつてますけれども今（こん）日でハ元研究（もとけんきう）しやうと云（い）つたものハ今（いま）ハ監督（かんとく）なり指図（さしづ）なりをする丈（だ）けに止（とゞま）つて自分（じぶん）の研究（けんきう）と云（い）う事（こと）ハマアなくなつて了（しま）つたんです、今（いま）の所（ところ）ぢや研究所（けんきうじよ）と云（い）ふものと白馬会（はくばくわい）と云（い）ふものとハ別物（べつもの）で会員（くわいゐん）の暢気（のんき）な寄合（よりあひ）ハ牛丼会（ぎうどんくわい）の方（はう）でやりまして研究（けんきう）の方（はう）ハ研究所（けんきうじよ）へ任（まか）して了（しま）つたんです（をはり）＠黒田氏の談は之に盡きざれども本紙発行停止中、白馬会は既に閉会せしを以て茲に尾を結ぶ事とす（一記者） |
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