| △北蓮蔵（きたれんざう）の「添乳（そへぢ）」全体（ぜんたい）に黒（くろ）く、随分骨（ずいぶんほね）は折（を）れたらうが、赤坊（あかんぼう）にまるみがなく母（はゝ）の体（からだ）とくついてゐる併（しか）しいつも大作（たいさく）に筆（ふで）を採（と）られるのは敬服（けいふく）「吹笛（すいてき）」何（なに）か意味（いみ）ありげで小説（せうせつ）の口絵（くちえ）の様（やう）だと云（い）ふ人（ひと）もある△白瀧幾之助（しらたきいくのすけ）の「復習（ふくしふ）」例（れい）によつた画様（ぐわよう）で、浅黄色（あさきいろ）が多過（おほす）ぎる。＠水彩画（すゐさいぐわ）パステル画（ぐわ）＠△三宅克己（みやけこくき）の水彩画（すゐさいぐわ）は三十点（てん）に近く、中々（なかなか）の勉強（べんきやう）である。其中（そのうち）一番の出来（でき）と思（おも）はれるのは「雨後（うご）の森（もり）」で、強（つよ）い色（いろ）が非常（ひじやう）に引立（ひきた）つて、遠（とほ）くに光線（くわうせん）の當（あた）つた所（ところ）がよく発揮（はつき）されて、而（しか）も全体（ぜんたい）にしつとりしてゐる処（ところ）に妙味（めうみ）がある「芋畑（いもばたけ）」もよいが、今少（いますこ）し色彩（いろずり）に緻密（ちみつ）な変化（へんくわ）を施（ほどこ）して貰（もら）ひたかつた「春（はる）」と「秋（あき）」とは失敗（しつぱい）である「樹木（じゆもく）の写生（しやせい）」は親切（しんせつ）な写生（しやせい）で精巧（せいこう）の点（てん）に於（おい）て勝（まさ）つて居（ゐ）る△中沢弘光（なかざわひろみつ）のパステル水彩合（すゐさいあは）せて六十点（てん）といふ多数（たすう）、非常（ひじやう）な勉強（べんきやう）である、小品（せうひん）のみだから指（さ）して評（ひやう）することは出来（でき）ぬが、孰（いづ）れも軽快（けいくわい）な洒落（しやらく）な作（さく）である。△矢崎千代治氏水彩（やざきちよぢしすゐさい）は孰（いず）れも色（いろ）が赤（あか）きに過（す）ぎてゐるが、其中（そのうち）では「奈良（なら）十三鐘（しよう）」を推（お）さう＠特別室（とくべつしつ）（裸体画）＠△黒田清輝（くろだきよてる）の「春（はる）」は少（すこ）し薄（うす）ツぺらな感（かん）じがするが、併（しか）し「秋（あき）」よりはよい「秋（あき）」はバックの景色（けしき）はよいが、人物（じんぶつ）は「春（はる）」程（ほど）よく出来（でき）て居（ゐ）ない。△ヘンリー、デユモンの大（おほき）な「エバ」の裸体（らたい）はよく出来（でき）てゐるが品格（ひんかく）に欠（か）けてゐる様（やう）である△岡田（おかだ）三郎助（ろすけ）の「花（はな）の香（か）」之（これ）は洋行帰（やうかうがへ）りの當時（たうじ）のとは痛（いた）く変（かは）つて残念乍（ざんねんなが）ら左程（さほど）の成効（せいかう）とは思（おも）へぬ。色（いろ）が重（おも）く、殊（こと）に右（みぎ）の人物（じんぶつ）の胴（どう）が円柱的（シリンダーライク）で間違（まちが）つてゐる、左（ひだり）の人物（じんぶつ）の花（はな）を持（も）つてる右（みぎ）の手（て）が小（ちい）さ過（す）ぎる様（やう）である△湯浅（ゆあさ）一郎（らう）の画室（ぐわしつ）デツサンはよいが顔（かほ）が赤（あか）きに過（す）ぎ、全体（ぜんたい）に顔（かほ）の色（いろ）が不十分（ふじうぶん）である、室（しつ）の明（あか）りは好（よ）い。＠参考画（さんかうぐわ）＠△和田英作模写（わだえいさくもしや）のクウルベー筆（ふで）「波涛（はたう）」ミレ筆（ふで）「落穂拾（おちぼひろ）ひ」ヴエラスケス筆（ふで）「王女肖像（わうぢよせうざう）」何（いづ）れも近代（きんだい）の名画（めいぐわ）として尊重（そんちよう）されて居（を）る作品（さくひん）で兎（と）や角評（かくひやう）する丈（だ）けが野暮（やぼ）である△山本芳翠模写（やまもとはうすゐもしや）「月神（げつしん）セメン」之（これ）は作者（さくしや）が仏国（ふつこく）で初（はじ）めて模写（もしや）したもので、原作（げんさく）は織物（おりもの）の下画（したゑ）だといふことである△デンデヴヰー筆（ふで）「秋（あき）の夕暮（ゆふぐれ）」墨画的（ぼくゞわてき）で色（いろ）が少（すく）ない、穏（おだや）かで高尚（かうせう）な画（ゑ）である＠△ホンタネジー筆（ふで）「夕暮（ゆふぐれ）の田舎家（いなかや）」其黒（そのくろ）く強（つよ）い処（ところ）に妙味（めうみ）があるので極（きは）めて品位（ひんゐ）があり高尚（かうせう）で何となく重味（おもみ）がある＠△ブラングヰン筆（ふで）「蜜柑（みかん）の収穫（しうくわく）」洒落（しやれ）た画曲線的（ぐわきよくせんてき）に描（ゑがい）たので趣（おもむ）きが非常（ひじやう）に面白（おもしろ）い＠△コラン筆（ふで）「樹蔭（じゆいん）」下図（したづ）であらう、例（れい）によつて軽快（けいくわい）。 |
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