| 出品（しゆつぴん）の取締（とりしまり）と選択（せんたく）を充分（じうぶん）にして△卑猥のものハ無論公衆の展覧を禁止するが當然 である然（しか）し同（おな）じ裸体（らたい）でも姿勢等（しせいとう）を描（えが）いた下図（したづ）などもあつて此等（これら）ハ研究上美術家（けんきうじやうびじゆつか）にハ無論必要（むろんひつえう）のもので最（もつと）も趣味（しゆみ）あるものとして歓迎（くわんげい）せられるのです尤（もつと）も公衆（こうしう）にハ余（あま）り益（えき）も無（な）く趣味（しゆみ）も無（な）い、白馬会（はくばくわい）に出品（しゆつぴん）してあつたものも公衆（こうしう）にハ趣味（しゆみ）も益（えき）も無（な）いが技術家（ぎじゆつか）にハ有益（いうえき）で趣味（しゆみ）のあるものもありますから△此等のものハ別に案を設けて 専門家（せんもんか）、批評家（ひゝやうか）、有志家等（いうしかとう）にのみ見（み）せる様（やう）にしたならバよろしと思（おも）ふのです、外国（ぐわいこく）の美術館（びじゆつくわん）にも随分古（ずゐぶんふる）いものにハ卑猥（ひわい）なものもあるのですが此等（これら）ハ殊別（しゆべつ）のものに丈（だ）け見（み）せる事（こと）にしてあります、是（これ）ハ美術高等会議（びじゆつかうとうくわいぎ）か或（あるひ）ハ美術学校（びじゆつがくかう）へ托（たく）して別室（べつしつ）でも設（まう）ける事（こと）として兎（と）も角（かく）も△取締を警察署の手から離して 文部省（もんぶしやう）でも何処（どこ）でも充分美術（じうぶんびじゆつ）を識別（しきべつ）する眼孔（がんこう）のある所（ところ）へ托（たく）すのが必要（ひつえう）です＠又或（またあ）る論者（ろんしや）ハ細則（さいそく）を設（まう）けて警察（けいさつ）で取締（とりしま）る、仮令（たと）へバ陰部（いんぶ）を見（あら）はすことを禁（きん）ずるといふようなことを警察（けいさつ）の手（て）で実行（じつかう）する、其他裸体（そのたらたい）でも當世風（たうせいふう）のものハ不可（いけ）ぬが昔（むかし）の神仏（しんぶつ）ならよいと云（い）う様（やう）な説（せつ）もあるのですが私（わたくし）ハ之（これ）に反対（はんたい）です何故（なぜ）なれバ△陰部（いんぶ）を蔽はなけれバならぬ と云（い）うのハ良（よ）くない実際風教上（じつさいふうけうじやう）からいつても陰部（いんぶ）を著（いちじる）しく蔽（おほ）ふことゝすると却（かへ）つて不自然（ふしぜん）で見（み）る人（ひと）の注意（ちうい）を惹（ひ）いて結果（けつくわ）が悪（わる）いのです別（べつ）して婦人（ふじん）でハこの憾（うらみ）がある△白馬会の布を纏つたのハ却つて悪結果 であると思（おも）ふのです、又（ま）た神仏（しんぶつ）ならバ差支（さしつかへ）が無（な）いとしたならば東洋（とうやう）にハ殆（ほと）んど裸体（らたい）は無（な）いのです西洋彫刻（せいやうてうこく）などハ裸体（らたい）が普通（ふつう）であつてその彫刻物（てうこくぶつ）ハ仮令（たと）へバ頭部（とうぶ）だけ古（ふる）い時代（じだい）を顕（あらは）し又（また）ハ名前（なまへ）をビーナス、フローラアとかに借（かり）るだけで△実際ハ現今の男女を裸体にして 描（えが）いたのが多（おほ）いのです規則許（きそくばか）りに拘泥（かうでい）すると此等（これら）の弊（へい）がある要（えう）ハ唯応用（たゞおうやう）の如何（いかん）にあるのです（つゞく）
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