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白馬会関係新聞記事 第6回白馬会展

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白馬会瞥見(其三)
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| 瞥見生 | 国民新聞 | 1901/10/27 | 2頁 | 展評 |
森川松之助氏(もりかはまつのすけし)の景色画(けしきぐわ)もなかなかの上作(じやうさく)だが中(なか)にも向(むかつ)て左(ひだり)の隅(すみ)に在(あ)る小(ちい)さな『浦』などは其(そ)の内(うち)にも上出来(じやうでき)かと思(おも)う又右(またみぎ)の上(うへ)に有(あ)る『日當り』の画(ぐわ)も上作(じやうさく)の方(はう)だらうが何様地面(なにさまぢめん)が泥濘道(でいねいみち)の様(やう)な気(き)がするのと空(そら)が少(すこ)し暗(くら)くはないかと思(おも)はれるのは此(こ)の絵(ゑ)の欠点歟(けつてんか)他『落陽』も『庭の隅』も可(か)なりの出来(でき)だ兎(と)に角景色(かくけしき)の色(いろ)には感心(かんしん)するが開会(かいくわい)の毎度(まいど)に景色(けしき)ばかりで人物(じんぶつ)を見(み)た事(こと)がない様(やう)で物不足(ものたら)ぬ気(き)がする次(つぎ)に矢崎千代治氏(やざきちよぢし)の出品中(しゆつひんちう)四枚(まい)の肖像も他(た)の景色も筆使(ふでづか)いには実(じつ)に賞(しやう)す可(べ)き点(てん)も有(あ)るが何様出品全体(なにさましゆつひんぜんたい)に黄色(きいろ)ばかりでセピヤ絵(ゑ)の感(かん)が有(あ)るのは欠点(けつてん)だ中(なか)にも景色(けしき)などは何(ど)れも何(ど)れも同(おな)じ黄色(きいろ)で有(あ)る為(た)めか時間(じかん)と気節(きせつ)の見分(みわ)けが付(つ)かんので甚(はなは)だ見苦(みぐる)しい様(やう)に見受(みうけ)た次(つぎ)が白瀧幾之助氏(しらたきいくのすけし)の『サカヤケ』之(これ)もナカナカの大作(たいさく)で画題(ぐわだい)も面白(おもしろ)いし筆使(ふでづかひ)も落付(をちつ)きてナカナカの上出来(じやうでき)だが大(おほ)きい丈(だ)け欠点(けつてん)も有(あ)る第(だい)一母親(はゝおや)の後(うしろ)に居(ゐ)る女(をんな)の子(こ)の目付(めつ)きが甚(はなは)だ不満足(ふまんぞく)で何処(どこ)を見(み)て居(ゐ)るのか一向不明瞭(かうふめいれう)だ其(そ)の上(うへ)に色(いろ)が如何(いか)にもコバルト勝(が)ちて絵全体(ゑぜんたい)に油気(あぶらけ)が有(あ)る様(やう)に見受(みう)けられるのは欠点(けつてん)だらう之(こ)れに比(ひ)して小(ちい)さい景色(けしき)の方(はう)には色(いろ)も美(うるわ)しく又纏(またまと)まつた絵(ゑ)が多(おほ)いようだ他聞乍(たぶんなが)ら黒田清輝氏(くろだきよてるし)は同氏(どうし)の絵(ゑ)を見(み)て関西美術(くわんさいびじゆつ)と評(ひよう)したそうだが生(せい)も又同情(またどうじやう)を表(へう)せざるを得(え)んのだ心持(こゝろも)ちのせいか年々技倆(ねんねんぎりやう)が下(さが)る様(やう)に思(おも)はれる作者大(さくしやおほい)に憤発(ふんぱつ)す可(べ)し(瞥見生)

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