近来美術家(きんらいびじゆつか)と称(しやう)する中絵画家(うちくわいぐわか)の間(あひ)だ、二派(は)に分(わか)れて白馬会(はくばくわい)なるものを生(しやう)じたり是(こ)れハ裸美人画(はだかびじんぐわ)にて有名(いうめい)なる黒田清輝(くろだきよてる)なんど云(い)ふ人(ひと)の張本(ちやうほん)にて美術学校派(びじゆつがくかうは)より割(わ)れて別(べつ)に旗幟(きし)を翻(ひるがへ)せしものなり乃(すなは)ち学校派(がくかうは)ハ日本画(にほんぐわ)に拠(よ)り白馬会(はくばくわい)ハ西洋画(せいやうぐわ)に拠(よ)り旗皷将(きこまさ)に競(きそ)はんとするの勢(いきほい)あり左(さ)れバ目下開会中(もつかかいくわいちう)の日本絵画協会(にほんくわいぐわけふくわい)の第(だい)一回共進会(くわいきようしんくわい)と合併(がつぺい)して出品(しゆつぴん)する都合(つがふ)なりしに西画派即(せいぐわはすなは)ち白馬会(はくばくわい)ハ別(べつ)に昨五日より油絵展覧会(あぶらゑてんらんくわい)として上野(うへの)に開会(かいくわい)したり然(しか)るに日本美術協会(にほんびじゆつけふくわい)にても秋季美術展覧会(しうきびじゆつてんらんくわい)を来(きた)る十日より上野(うへの)に開会(かいくわい)すれバ上野(うへの)の秋(あき)ハ三会相競(くわいあひきそ)ふて一段(だん)の見物(みもの)なるべし兎(と)も角絵画上(かくくわいぐわぢやう)の一波瀾(はらん)と云(い)ふべし |