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白馬会関係新聞記事 第13回白馬会展

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白馬会画評(はくばくわいぐわひやう)(三)
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| 丹青子 | 国民新聞 | 1910(明治43)/05/25 | 6頁 | 展評 |
次(つぎ)に参考室(さんかうしつ)に入(はひ)るとフオンタネジイ(此人(このひと)は日本(にほん)に油絵(あぶらゑ)を輸入(ゆにふ)したる恩人(おんじん))の遺作(ゐさく)、裸体(らたい)の女人(ぢよじん)、一見何(けんなん)の奇(き)もないやうだが熟視(じゆくし)すれば実(じつ)に正確(せいかく)な線(せん)で一点苟(てんいやしく)もしてない。貴重(きちよう)な芸術的参考品(げいじゆつてきさんかうひん)で、見(み)て面白(おもしろ)いとか面白(おもしろ)くないとかの問題(もんだい)ではない。湯浅(ゆあさ)一郎君模写(らうくんもしや)のヴエラスケースのエソポとメリツドは何(どち)らも原物(げんぶつ)はマドリツド博物館(はくぶつくわん)に在(あ)る。後者(こうしや)は往年吉田博君(わうねんよしだひろしくん)の模写(もしや)を見(み)たが湯浅君(ゆあさくん)の方(はう)がよいと思(おも)ふ。次(つぎ)に之(これ)も同君模写(どうくんもしや)のヴエラスケースの織女及び官女、之(これ)は最(もつと)も大(おほ)きい且(か)つ非常(ひじやう)に苦心(くしん)したらしい。原物(げんぶつ)は殆(ほとん)ど此通(このとほ)りだと実見者(じつけんしや)の話(はなし)である。初(はじ)め見(み)るとツマラヌが長(なが)く親(したし)む内(うち)によくなるのがヴエラスケースの画(ゑ)の特長(とくちやう)だと云(い)ふ。次(つぎ)にコラン先生(せんせい)のデツサンが六枚(まい)ある。いゝ加減(かげん)に白(しろ)ツぽい色(いろ)を使(つか)つてコラン風(ふう)だと云(いつ)てよがつてる先生達(せんせいたち)に斯(こ)んな確(たし)かなスケツチが出来(でき)るかと問(と)うて見(み)たい。コルモンの小(ちひ)さな画稿(ぐわかう)と藤島君(ふぢしまくん)のシヤバンヌの壁画(へきが)の一部分(ぶゞん)も面白(おもしろ)い。@ずつと此(これ)まで見(み)て来(く)ると余(あま)り多数(たすう)なので疲(つか)れて了(しま)つた。此(これ)で止(や)めようと思(おも)つたが、それでもと尚見(なほみ)ていく内(うち)に六百二十八の午前と題(だい)する小幅(せうふく)(山脇信徳(やまわきのぶのり))が目(め)に付(つ)いた。お茶(ちや)の水(みづ)の朝景色(あさげしき)を描(か)いたもので昨年(さくねん)の文部省(もんぶしやう)の停車場(ていしやぢやう)の朝景色(あさげしき)と似(に)てるので見逃(みのが)す事(こと)が出来(でき)なかつた。最後(さいご)に故荻原守衛君(こをぎはらもりゑくん)の肖像(せうざう)(六四八)があつた。此(これ)は画(ゑ)も感心(かんしん)しない又似(またに)てもゐないが此彫刻家(このてうこくか)の早世(さうせい)を惜(をし)む故(ゆゑ)に特(とく)に目(め)を引(ひい)た。(完)

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