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Havell, E.B. "The Ideals of Indian Art" London, 1911
著者Ernst Binfield Havell(1861-1934)は、1896年からカルカッタに滞在してインドにおける工芸教育に画期的変化をもたらす一方、欧米へのインド美術の紹介者として知られた。本書はハヴェル著"Indian Sculpture and Painting"(1908)と並んで、英語圏におけるインドおよび東洋美術に関する言説に新たな展開をもたらしたとされる。本書扉には"To Mr. K. Okakura with best regards, Abanindro Nath Tagore, 26th Sept 1912 Calcutta"とあり、岡倉天心(1863-1913)にアバニンドロナート・タゴール(1871-1951)が贈ったものであることがわかる。アバニンドロナート・タゴールはカルカッタで活躍した画家・文筆家で、ハヴェルや1903年に訪印した横山大観、菱田春草の影響を受け、新インド様式の礎を築いた。本書には、文献調査に協力するかたちで関わっている。当所には中川文庫として登録されており、岡倉から、親交のあった中川忠順の手に渡ったと推測される。(Y)

Joly, Henri L. "Legend in Japanese Art" London・New York, 1908
本書は日本美術品の研究家であったジョリーの主著のひとつで、美術作品の主題の英訳と漢字を表記し、その意味を記した 事典である。本扉に"Respectfully presented to Mr. Masaki Naohiko, London, September 1910, Henri Joly"と記され ている。正木直彦(1862-1940)は1910年2月から11月まで日英博覧会美術部審査主任として渡英しており、英国滞在 中の9月に著者から直接に贈られたものと見られる。ジョリーは日本美術品の個人コレクションカタログも数多く刊行しており、 根付や刀剣などに造詣が深かった。(Y)

Warner, Langdon "Buddhist Wall Paintings - A Study of a Ninth-Century Grotto at Wan Fo Hsia" London, 1938
『万仏峡洞―9世紀仏教壁画の研究』として知られる本書は、飛鳥・奈良時代の仏教美術研究者で、1943年にアメリカ政府のロバーツ委員会に日本の重要な文化財を網羅した「ウォーナー・リスト」を提出して奈良、京都を戦火から守ったことで知られるラングドン・ウォーナー(1881-1955)の主著のひとつ。ウォーナーはハーヴァード大学卒業後、来日し、岡倉天心に師事して日本美術史を学んだ。本書は著者から矢代幸雄へ"With the warmest regards of his friends"の言葉とともに刊行の年の2月に贈られている。矢代はウォーナーと戦前、戦後を通して深い親交があり、当所の前身帝国美術院附属美術研究所の英語名は、ウォーナーとの相談のうえ決定したという。(Y)
Seidlitz, Woldemar von "A History of Japanese Colour-Prints" London, 1910
著者ザイドリッツ(1850-1922)は浮世絵の研究者。本書は、William Anderson "Portfolio" (1895)等の浮世絵の概説書を踏まえ、浮世絵師と同時代の絵師たちとの交流などを含めて紹介するという意図で著わされ、Ernest Fenollosa "The Masters of Ukiyoye" (1896) に多くを負っている。当所の職員であった尾高鮮之助旧蔵。(Y)

Ramachandran, T.N. "Bulletin of the Madras Government Museum, Buddhist Sculptures from a Stupa near Goli Village, Guntur District" Madras, 1929
裏表紙に1932年5月23日付けの著者からの為書がある。尾高鮮之助旧蔵。尾高は1931年秋から約1年間洋行しており、この間に寄贈されたと推測される。本書は1926年に発掘され、マドラス博物館の所蔵品となったストゥーパに関する論考で、著者は、当時マドラス博物館の考古学助手をつとめていた。(Y)

"Collection S. Bing : Objets D'art et Peintures du Japon et de la Chine" Paris, 1906
(上)第1冊(Sculptures)扉
(下・左より)第6冊(Peintures)
862. Sôtatsou. Paravent à qutre feuilles dècorè de pivoines et de fleurs des champs sous une touffe de lunaires , de graminèes et d'ombelles.
935. Hok'saï. Paysan sous la neige essuyant un tonneau.
925. Hok'saï. Courtisane, de profil à gauche, ayant une grande lanterne à côté d'elle.
1906年5月7~12日にパリのデュラン=リュエルの画廊にて開催されたジークフリート(通称サミュエル)・ビング(1838-1905)のコレクション没後競売カタログ。日本を中心とした東洋美術工芸品951点が彫刻、漆工、金工、陶磁器、根付、喫煙具、扇、染織、絵画などのジャンル別に分類され、Héliog Dujardinによる21葉のフォトグラヴュールを含む多数のモノクロ図版とともに6分冊に収められている。ビングはヨーロッパ、アメリカのジャポニスム、アール・ヌーヴォーの推進者となった美術商であり、日本美術専門誌'Le Japon artistique'の刊行、数度にわたる関連の展覧会開催等を通じて日本美術の普及紹介に尽力した。自身も日本の陶磁器、浮世絵の大コレクターとして知られていたが、1904年頃に破産している。(K)
"Catalogue : The "Bowes" Collection of Japanese Art" Liverpool, 1901
リヴァプール・アート・クラブの創設者であり、"Japanese Bowes"の異名をとるほど熱心な日本美術の蒐集家であったジェイムズ・L・ボウズ(1834-99)の売立目録。巻頭には1867年のパリ万博で購入した小箪笥の図版が掲載される。彼のコレクションは1874年のサウス・ケンジントン美術館「七宝と金工の特別展」をはじめ展覧会に度々出品されている。画家のホイッスラー(1834-1904)はリヴァプール近郊のレイランドの別荘に出入りし、パトロンである彼の紹介でボウズの蒐集品を目にしている。(U)

"Collection Louis Gonse : Objets D'art Du Japon" Paris, 1926
フランスにおけるジャポニスム運動の中心的役割を果たした雑誌『ガゼット・デ・ボサール』の編集長であったルイ・ゴンス(1841-1926)は、自身が日本美術のコレクターであったことでも知られる。本書は、ゴンスのコレクションのうち、浮世絵と版本を中心とした1050点の売立目録。その他、本書では、掛幅、陶磁器、根付、置物なども収録されるが、それらと比してゴンスコレクションの中核をなした浮世絵については、やはり質の高い点が注目されよう。(S)

Audsley, George Ashdown "The Ornamental Arts of Japan"
London, 1882

(上)vol.1 扉
(下・左)vol.1 表紙
(下・右)vol.1 plate VIII
本書の著者、オーズリー(1838-1925)は、イギリス人の建築家、著述家として知られる人物である。1860年代後半から1870年代にかけて、兄ウィリアムとともにリヴァプールやその周辺において、Toxteth Cathedralなど数々の建築の設計を行っており、また、1870年から84年にかけては、本書をはじめ、"Keramic Art of Japan"(口絵4上段参照)などを出版し、ジャポニスムに大きな影響を与えた日本美術の研究家としても著名である。本書は、vol.1と2の2冊組みで、染織、漆工芸、金属工芸、寺社装飾、置物など、現在のいわゆる工芸ジャンル全般にわたって、それぞれの技法や製作工程に重点をおいた記述となっており、また、リトグラフ(石版)による多数の美しい挿図が収録されている点も特筆すべきであろう。(S)
Audsley, G. A./Bowes, James L.
"La Ceramique Japonaise" Paris, 1880

日本美術のコレクター、紹介者として知られるオーズリーとボウズによってヨーロッパ各国で出版された日本陶磁器の豪華図録。本書はフランス語版。色刷石版図版を多数収録し、日本美術概説に続き、肥前、薩摩、九谷などの陶磁器を産地別に紹介している。本書は扉頁の蔵書印からパリ近郊のラ・ロシュ・ギュイヨン城に旧蔵されていたことがわかる。(U)

Jarves, James Jackson "A Glimpse at the Art of Japan" New York, 1876
フィレンツェ在住のアメリカ人批評家で、コレクターでもあったジャーヴス(1818-88)は、来日経験はなかったものの、『北斎漫画』などを高く評価し、アメリカに日本美術を紹介した。
  Alcock, Rutherford, Sir "Art and Art Industries in Japan" London, 1878
イギリス外交官で初代駐日総領事に任ぜられたオールコック(1809-97)は、日本在任中に日本美術を研究し、帰国後その特質について述べた本書を著した。(S)

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