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白馬会関係新聞記事 第11回白馬会展

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白馬会展覧会評(一)
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| 破裂刀 | 日本 | 1907(明治40)/10/21 | 1頁 | 展評 |
△白馬会展覧会(はくばくわいてんらんくわい)が上野(うへの)の二号館跡(がうくわんあと)で開(ひら)かれたが、文部省展覧会(もんぶしやうてんらんくわい)が間近(まぢか)くあることだから点数(てんすう)は少(すくな)く無(な)いが大作(たいさく)は余(あま)り此方(このはう)に出(で)て居(ゐ)ない、然(しか)し大頭(おほあたま)から尻尾(しつぽ)に至(いた)るまで白馬会全体(はくばくわいぜんたい)の、最近(さいきん)一年間(ねんかん)の成績(せいせき)は十分之(ぶんこれ)によつて窺(うかゞ)ふことが出来(でき)る、それで茲(こゝ)に略評(りやくひやう)を試(こゝろ)みる次第(しだい)である、@△批評(ひゝやう)に先(さきだ)ち一寸苦言(ちよつとくげん)を呈(てい)したいのは、一定(てい)の入場料以外(にふぢやうれういぐわい)に下足(げそく)とか傘(かさ)とかの預賃(あづかりちん)を請求(せいきう)することである、無論是(むろんこれ)は今回(こんくわい)に初(はじ)まつたことでもなければ、又白馬会(またはくばくわい)に限(かぎ)つた次第(しだい)でも無(な)い、現(げん)に向側(むかふがは)の美術協会(びじゆつけふくわい)でも取(と)つて居(ゐ)る、然(しか)し萬事斯(ばんじか)ういふ宿弊(しゆくへい)の改良(かいりやう)は最新(さいしん)の思潮(してう)を代表(だいへう)する白馬会(はくばくわい)などから実行(じつかう)して貰(もら)ふべき筈(はず)だと思(おも)ふ、要(えう)するだけの費用(ひよう)は入場料(にふぢやうれう)として取(と)るがよい、『人(ひと)を招待(せうたい)して置(お)き乍(なが)ら金(かね)を貪(むさぼ)るなんか失禮(しつれい)な』と這入口(はいりくち)で呟(つぶや)いて居(ゐ)た人(ひと)もあつた、無理(むり)も無(な)いことだ@△先(ま)づ一通(とほ)り見廻(みまは)つて直(すぐ)に感(かん)ずるのは、第(だい)一に陳列(ちんれつ)に秩序(ちつぢよ)が無(な)く余(あま)りに乱雑過(らんざつす)ぎることである、大体(だいたい)の方針(はうしん)は同(どう)一人(じん)の作(さく)を同(どう)一ケ所(しよ)に集(あつ)めてあるやうに思(おも)はれるが、それにしてもゝう少(すこ)し組織的(そしきてき)に出来(でき)さうなものだ何(ど)の展覧会(てんらんくわい)に限(かぎ)らず斯(か)ういふ事(こと)には少(すこ)しの工夫(くふう)も凝(こ)らさない所(ところ)は頗(すこぶ)る非美術的(ひびじゆつてき)といふべしだ、兎(と)に角観(かくみ)る者(もの)を困(こま)らさないやうに不快(ふくわい)の感(かん)を起(おこ)さないやうに心掛(こゝろが)けて欲(ほ)しいものだ@△第(だい)二に出品(しゆつぴん)に画題(ぐわだい)の説明(せつめい)も無(な)ければ、又作者(またさくしや)の名(な)も出(で)て居(ゐ)ない、只漸(たゞやうや)く商標(しやうへう)のやうな不完全(ふくわんぜん)な印(いん)を手頼(たよ)つて筆者(ひつしや)の誰(たれ)なるかを知(し)る位(くらゐ)で、観客(くわんかく)を苦(くるし)めること一通(とほり)で無(な)い、@△計(はか)らずも小言(こゞと)が長(なが)くなつた、早速次回(さつそくじくわい)から批評(ひゝやう)に入(はい)らう。

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