| 白馬会（はくばくわい）の歴史（れきし）は我国近代洋画（わがくにきんだいやうぐわ）の歴史也（れきしなり）、白馬会紀念（はくばくわいきねん）十周年（しうねん）の展覧会開設（てんらんくわいくわいせつ）に際（さい）し首領（しゆりやう）黒田清輝氏（し）を訪（と）うて左（さ）の談（だん）を聞（き）く、文字（ぶんじ）の責総（せめすべ）て筆者（ひつしや）にあり（一記者（きしや））＠△不思議（ふしぎ）に気（き）が合（あ）ふ＠初（はじ）めはお互（たがひ）に研究（けんきう）でもしながら絵（ゑ）を画（か）かうではないかと云（い）ふので画家計（ゑかきばか）りと限（かぎ）つたのではない文学家（ぶんがくか）の方（かた）もあり又画家（またゑかき）でない方（はう）の人（ひと）もあつてお互（たがひ）の楽（たのし）みにしやうと云（い）ふのが元（もと）のお話（はなし）であつたのです、それで其私（そのわたくし）なんかハ帰（かへ）（外国（ぐわいこく）より）つてから間（ま）もなく話（はなし）になつたもんですから余（あま）り人（ひと）も知（し）りませぬ、前（まへ）から知（し）つて居（ゐ）た人、又外（またほか）の者（もの）が知（し）つて居（ゐ）る人（ひと）などを加（くは）へてやつて見（み）た処（ところ）が不思議（ふしぎ）に気（き）が合（あ）ふ、新（あたら）しく入（い）つた人（ひと）もあつたけれども非常（ひじやう）に間（なか）が好（よ）く今泉秀太郎（いまいづみひでたらう）といふ人（ひと）が唯（た）つた一人死（ひとりし）んだのみで友達（ともだち）の間（あひだ）でも円満（えんまん）にやつて居（ゐ）たんです、それですから如其云（さふい）ふ間柄（あひだがら）の事（こと）に就（つい）て変化（へんくわ）がないのです、マア交際（つきあひ）の工合（ぐあひ）ハ平生皆種々職（ふだんみないろいろしょく）が違（ちが）つて居（ゐ）たり何（なに）かして一月（ひとつき）に一遍宛此（ぺんづゝこの）十年間続（ねんかんつゞ）いて寄（よ）つて居（を）るのです、初（はじ）めの中（うち）ハ何（なん）でもないのですけれども毎月（まいつき）……疎遠（そゑん）な間（なか）でも一月（ひとつき）に一遍（ぺん）ハ必（かなら）ず寄（よ）るのですが幸（しあは）せに少（すく）ないもんですから、それに寄（よ）りさへすれバ一所（しょ）になつて先（ま）づ人（ひと）にも云（い）はれない冗談（じやうだん）を云（い）ひ少（すこ）しも隔（へだ）てずにやつて居（ゐ）るのです＠△牛丼会（ぎうどんくわい）の由来（ゆらい）＠一月（つき）に一遍寄合（ぺんよりあ）ふのに何時（いつ）と云（い）ふ事（こと）なく牛丼会（ぎうどんくわい）といふ名（な）が附（つ）いて了（しま）つたのです、それハ此（この）四五年（ねん）、五六年（ねん）も前（まへ）になりますが二三人（にん）の間（あいだ）、赤坂（あかさか）の溜池（ためいけ）町に小（ちい）さい牛肉屋（ぎうにくや）があつたんです、溜池研究所（ためいけけんきうじよ）の直（す）ぐ側（わき）にあるもんですから研究所（けんきうじよ）で取（と）つて食（た）べたり行（い）つたりして居（ゐ）たんですが後（のち）にハ此所（こゝ）で寄合（よりあひ）をするやうになつたんです、其処（そこ）に其牛肉（そのぎうにく）の丼（どんぶり）があるんです、そこで其牛丼（そのぎうどん）と云（い）ふ名（な）が附（つ）いたのです、それハ三年計（ねんばか）り前（まへ）に潰（つぶ）れて了（しま）つたんで名（な）ハありますが実（じつ）ハなくなつて了（しま）つてるんです、其外（そのほか）にハ臨時（りんじ）に友達（ともだち）の内（うち）に四五人宛寄合（にんづゝよりあ）ふと云（い）ふ事（こと）も當（あた）り前（まへ）、他人（たにん）の交際（かうさい）にもありますけれども… |
目次 |
戻る 
進む 