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本年（ほんねん）は思（おもひ）の外落莫（ほからくばく）でない出品（しゆつぴん）も昨今出揃（さくこんでそろ）ひつゝあるその中（なか）には随分目（ずゐぶんめ）に附（つ）くものが多（おほ）くある先（ま）つ入ロ（いりくち）の方（はう）には窪田喜作氏（くぼたきさくし）の出品（しゆつぴん）は概（がい）して一昨年のよりは不出来（ふでき）と思（おも）ふが然（しか）も『残雪』と『裁縫』などは先（ま）つ佳（か）なりと評（ひやう）す可（べ）しだ願（ねがは）くは今少（いますこ）しく総（すべ）てに就（つい）て注意（ちうい）がほしい、それから前面（ぜんめん）に掛（かゝ）りて居（を）る赤松麟作氏（あかまつりんさくし）の『夜行列車』は幅員（ふくゐん）も広（ひろ）く人物（じんぶつ）も多（おほ）く製作上（せいさくじやう）の困難察（こんなんさつ）す可（べ）しだ全体（ぜんたい）の纏（まとま）まりは先（ま）つ宜（よろ）しい方（はう）であるとしても夕方（ゆふがた）の汽車内（きしやない）としては余（あま）りに明（あか）る過（す）きるかと思（おも）はるゝ多（おほ）くの人物（じんぶつ）は何（いつ）れも性格（せいかく）は現（あら）はれて居（ゐ）る様（やう）だが頭（あたま）の割（わ）りには手足（てあし）が拙（つたな）く且（か）つ色（いろ）がどれどれも同（おな）じ様（やう）で全体（ぜんたい）によごれて居（ゐ）るのは遺憾（ゐかん）と申（まを）さねばならぬ、然（しか）し此作（このさく）の如（こと）きは客員（かくゐん）の出品中（しゆつぴんちう）の主物（しゆもつ）かも知（し）れぬ、尚（な）ほ追々（おひおひ）と見（み）るに任（まか）せ評（ひやう）をする積（つも）りである（瞥見生） |
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