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同会の評は已に各社（かくしや）の紙上に現はれぬ、今（いま）にして之を呶々する稍時機（やゝじき）に後れたるの感（かん）なき能はずと雖も、各社の評（ひやう）たる多くは出品出揃以前にして未（いま）だ同会の全豹を窺知し得たりと言ふを得（う）べからずされば全部出揃（ぜんぶでそろ）ひたる今日に於いて其概評（そのがいひやう）を試みむも亦た甚だ當らずとせじ＠今回は室内（しつない）の装置に於て光線（くわうせん）の直射を避くる工風を為し画面の配置（はいち）に於て周密（しうみつ）なる注意を用ゐたる等著しく其整頓を示し、之を明治美術会に比する時は異常（ゐじやう）なる進歩に驚かざるを得（え）ず明治美術会の今や萎靡振（ゐびふる）はざるに至れりとは専（もつぱ）ら人の伝説（でんせつ）する所、今白馬会を見るに及んで評者も亦た其感を同じうしたり、蓋（けだ）し白馬会は必（かなら）ずしも名を明治美術会と争ふの意（い）あるにあらざるべきも美術会（びじゆつくわい）の現状斯くの如（ごと）きの時（とき）に於て白馬会の進歩は更に著しく人目を惹（ひ）くと同時に、独（ひと）り隆々（りうりう）として其名を成すに至るべき乎＠画に於ても会一会ごとに進歩（しんぽ）を示し来れり、特（とく）に今回は何れも大幅に勉めたるが如し、即ち黒田氏の小督、久米氏の残暉、小林氏の馬子、藤島氏の池畔、湯浅氏の漁家、白瀧氏の休息等是れ其大なるもの更（さら）に各氏の主（お）もなる作に就（つ）き少しく謾評をれば広瀬勝平氏の作は磯を以て最（さい）とす試む描法他作と異なりて佳作たるを失せざれど無茶に塗抹せし痕跡（こんせき）の見ゆるは些（いさゝ）か欠点と言ふべし＠和田英作氏は頗る多数（たすう）に出品したるも総（すべ）て昨年に比し見劣りのせらるゝは遺憾（ゐかん）なり、若し稍々探るべきものを挙げば、機織ならむ三保の富士、富士川の富士を賞（しやう）する人もあれど富士の薄き為め何となく画の軽（かろ）く見ゆるは評者の服し難き所（未完） |
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