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◎美術協会展覧会は京（きやう）の画家（ゐかき）はんの遅（おそ）ふお上（のぼ）りやはツたのが此頃揃（このごろそろ）ひて南館（なんくわん）の眺（なが）めなかなかに賑（にぎ）はし棲鳳（せいほう）の孤猿（こえん）、松年（しようねん）の猫（ねこ）に鍾馗（しやうき）、直入老（ちよくにふらう）の山水（さんすゐ）など、これに景年（けいねん）の鴛鴦（をしどり）、曾文（そぶん）の千鳥（ちどり）も席（せき）を此処（こゝ）に移（うつ）してズツと並（なら）ばれしは人目（ひとめ）を惹（ひ）く陳列委員（ちんれつゐゝん）のご趣向（しゆかう）、お陰（かげ）にて一寸気焔（ちよつときゑん）を吐（は）き居（ゐ）るところいぢらしき風情（ふぜい）なり＠◎松年の猫相変（あひかは）らず覇気持切（はきもちき）りにて獰悪（ねいあく）とや云（い）はん陰険（いんけん）とや云（い）はん誠（まこと）に不可思議（ふかしぎ）の猫相（めうさう）、上（うえ）に懸（か）けたる鍾馗（しやうき）の面（つら）と能（よ）く肖（ゐ）て居るもをかし＠◎白馬会の出品（しゆつぴん）は此（この）二三日（にち）に揃（そろ）ふべきか、和田英作、久米桂一郎氏等（しら）の出品（しゆつぴん）は早（はや）くより揃（そろ）ひ大物（おほもの）にては安藤仲太郎氏（し）の鳩山議長（ぎちやう）の肖像（せうざう）、黒田清輝氏（し）の避暑（ひしよ）、和田氏（し）の舟待第（ふなまちだい）一に舁入（かきい）れられぬ、入口（いりぐち）なる今泉氏（し）のポンチ画（ゑ）も一寸愛嬌（ちよつとあいきやう）なり今日當（けふあたり）は黒田氏（し）の裸体画萩（らたいぐわはぎ）と美人（びじん）の二個（こ）いづれか舁込（かきこ）まれて今年（ことし）も大入（おほいり）の小口此処（こぐちこゝ）に開（ひら）かるゝなるべし＠◎お隣（となり）なる日本絵画協会は場（ば）も広（ひろ）く出品（しゆつぴん）も中々多（なかなかおほ）くして美術学校（びじゆつがくかう）の教師連中奔走（けうしれんちうほんそう）の気焔（きえん）なかなか旺（さか）んなり早（は）や既（すで）に掲（かゝ）げられたる中（なか）には美術協会計（びじゆつけふくわいばか）り悪（わる）くも云（い）はれぬ様（やう）な作少（さくすくな）きにあらねど東洋画（とうやうぐわ）の新派（しんぱ）とも云（い）ふべき美術学校諸秀才（びじゆつがくかうしよしうさい）の大作（たいさく）は是れより続々出（ぞくぞくい）づべしとのことにて其陣取（そのぢんどり）の既（すで）に定（さだ）まり居（を）りぬ全（まつた）くの出揃（でそろひ）は来月（らいげつ）十日に掛（か）けてなるべしとぞ＠◎美術協会（びじゆつけふくわい）にては金子審査長（しんさちやう）、岡倉美術学校長等（びじゆつがくかうちやうら）博覧会出品候補の作（さく）を求（もと）められしとか此探（このさが）しもの如何（いか）に六（む）づかしかりけん問（と）ひたき心地（こゝち）するなり＠◎京都の棲鳳其他有望（せいほうそのたいうばう）の青年画家（せいねんぐわか）一斉奮（さいふる）つて苦辛（くしん）の作（さく）を絵画協会（くわいぐわけふくわい）に出（い）だすべしと伝（つた）ふ東洋画（とうやうぐわ）の趨勢予（すうせいあらかじ）め知（し）るべきなり＠◎紫（むらさき）のリボンを胸間（きやうかん）に懸（か）けたる白馬会（はくばくわい）の人々（ひとびと）、此（この）リボンに日本（にほん）の日陰蔓（ひかげづる）を参酌（さんしやく）したる紫色蜷結（しゝよくになむすび）の新徽章を懸（か）けたる美術学校（びじゆつがつかう）の教授連（けうじゆうれん）、さては其青色（そのせいしよく）なるを懸（か）けたる同校（どうかう）の学生例（がくせいれい）の制服天神様（せいふくてんじんさま）を着（つ）けたる同（おな）じ学生（がくせい）の人々右往左往紫影翠光相映（ひとびとうわうさわうしえいすゐくわうあいえい）じてこゝ美術界（びじゆつかい）の天地昨年（てんちさくねん）に増（ま）して美（うる）はし（芳） |
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