| 団体不必要の時機＠本年展覧会見合せ＠（黒田清輝画伯談）＠洋画会（ようぐわかい）の中堅（ちうけん）たりし白馬会解散（はくばくわいかいさん）に付（つい）て同会（どうくわい）に関係深（くわんけいふか）き帝室技芸員黒田清輝氏（ていしつぎげいゝんくろだきよてるし）は左（さ）の如（ごと）く物語（ものがた）れり＠△創立の趣意 白馬会（はくばくわい）は明治（めいぢ）廿九年私共（ねんわたくしども）が西洋（せいよう）から帰（かえ）つて来（き）て日本（にほん）でも何（なに）か画家（ぐわか）の会合（くわいごう）を拵（こしら）へて見（み）たいといふ相談（そうだん）が持上（もちあが）つて久米（くめ）、小代（こしろ）、佐野（さの）、安藤（あんどう）、故山本（こやまもと）、今田（いまだ）、吉岡（よしおか）、中村（なかむら）、堀江（ほりえ）、今泉（いまいづみ）、蒔嶋（まきしま）、和田（わだ）（英（えい））、岡田（おかだ）（三）、小林（こばやし）、佐久間（さくま）、光村（いはむら）、長原（ながはら）といふ顔触（かおぶ）れで岡倉（おかくら）さんの日本絵画協会（にほんくわいぐわきようくわい）からも大分盡力（だいぶじゆんりよく）して貰（もら）つた創立（そうりつ）の當時聖坂（とうじひじりざか）の濁酒屋（とぶろくや）で話（はなし）が纏（まとま）つたから濁酒（どぶろく）に因（ちな）んで白馬会（はくばくわい）の命名（めいめい）も至（いた）つて無雑作（むざうさ）に極（きま）つた＠△政府の展覧会 白馬会（はくばくわい）の主眼（しゆがん）とする事業（じぎよう）は絵画展覧会（くわいぐわてんらんくわい）の開催（かいさい）だつたので幾回（いくくわい）か会（くわい）を重（かさ）ねて白馬会（はくばくわい）の展覧会（てんらんくわい）が先（ま）づ世間（せけん）から認（みと）められる様（よう）になつた其中文部省（そのうちもんぶしよう）でも美術展覧会（びじゆつてんらんくわい）を開催（かいさい）する機運（きうん）になつた政府（せいふ）の事業（じぎよう）として展覧会（てんらんくわい）を開催（かいさい）する方（ほう）が理想的（りそうてき）である事（こと）は勿論（もちろん）である謂（い）はゞ我々（われわれ）が創立當初（そーりつとうしよ）に期（き）して居（い）た希望（きぼう）が充（み）たされた訳（わけ）であると同時（どうじ）に又我々（またわれわれ）が政府（せいふ）の展覧会（てんらんくわい）に力（ちから）を注（そゝ）いで作品（さくひん）を出（だ）すからには自分達（じぶんたち）の展覧会（てんらんくわい）には余力（よりよく）を注（そゝ）ぐから勢（いきお）ひ残滓（かす）を出品（しゆつぴん）するといふ事（こと）になる夫（そ）れでは我々（われわれ）が団体（だんたい）を設（もう）けて更（さら）に別（べつ）の展覧会（てんらんくわい）を催（もよお）す必要（ひつよう）がない即（すなわ）ち個人（こじん）として個人（こじん）の作品（さくひん）を展覧（てんらん）するとでも云（い）ふ事（こと）の外（ほか）には政府（せいふ）の事業（じぎよう）と同（おな）じ様（よう）な展覧会（てんらんくわい）を開（ひら）くのは重複（ぢよふく）した事（こと）であると云（い）ふ理由（りゆう）から今月（こんげつ）八日（か）の晩（ばん）に委員達（いゝんたち）が協議会（きようぎくわい）を開（ひら）いて白馬会（はくばくわい）が成立（せいりつ）した時（とき）と同様（どうよう）に矢張（やつぱ）り至（いた）つて無雑作（むぞうさ）に解散（かいさん）といふ事（こと）に極（きま）つて了（しま）つたのである＠△花時の解散式 従（したが）つて今後（こんご）は会員各自（くわいいんかくじ）が自由（じゆう）に個人的（こじんてき）に大（おゝい）に研究（けんきう）もし発展（はつてん）もしやう個人（こじん）としての作品展覧会（さくひんてんらんくわい）にはお互（たが）ひに応援（おうえん）をする事（こと）になつた、で白馬会（はくばくわい）が創立當時開会式（そうりつとうじかいくわいしき）といふ様（よう）な事（こと）をしたから今度（こんど）も恰度西洋（ちようどせいよう）へ行（ゆ）つて居（い）る久米桂（くめけい）一郎（ろう）と三宅克己（あけこき）との両君（りようくん）が来月帰朝（らいげつきちよう）する筈（はづ）だから恰（あたか）も花時（はなどき）でもあり解散式（さんくわいしき）を行（おこな）はうといふ相談（そうだん）が一決（けつ）したのである云々（うんぬん）
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