| 小林真二氏（し）「赤城街道（あかぎかいどう）の夕照（ゆうやけ）」山（やま）に夕陽（せきよう）の反射（はんしや）した具合（ぐあい）が非常（ひじよう）に好（よ）い、空（そら）のコバルトには今少（いますこ）し深味（ふかみ）を持（も）たせたかつた、同（おな）じ人（ひと）のスケツチ「静（しづ）かな流（なが）れ」之（こ）れも佳作（かさく）の一に数（かぞえ）る事（こと）が出来（でき）る岡吉枝氏（し）「少女（しようぢよ）」例（れい）に依（よ）つて器用（きよう）な筆（ふで）ではあるが、バツクが少（すこ）し不得要領（ふとくようりよう）で人物（じんぶつ）と離（はな）れて居（い）ないのと体（たい）の丸味（まるみ）が見（み）えないのとは大（だい）なる欠点（けつてん）であるが平面（へいめん）に灰色（はいゝろ）を用（もち）ひたのは品位（ひんい）の上（うえ）から極（きわ）めて不利益（ふりえき）だ「遊蝶花（ゆうちようくわ）」も前者（ぜんしや）に似（に）たもので同様（とうよう）の非難（ひなん）は免（まぬ）かれぬ。＠牧野司郎氏（し）「日比谷（ひゞや）の冬（ふゆ）」冬枯（ふゆが）れの感（かん）じは肯（うなづ）かれるが樹木（じゆもく）の観察（くわんさつ）が如何（いか）にも杜撰（づさん）を極（きわ）めて居（い）る、地面（ぢめん）の一部（ぶ）にも今少（いますこ）し柔（やわら）かい光（ひかり）が欲（ほ）しかつた。＠近藤芳男氏（し）「稲叢（いなむら）」前者（ぜんしや）と同（おなじ）じ行（ゆ）き方（かた）で比較的難（ひかくてきなん）がない、稲叢（いなむら）の影（かげ）の辺（ほと）りは今少（いますこ）し強（つよ）い色（いろ）が加（くわ）へたかつた。＠此他（このた）にも尚（なお）小川十藏氏（し）の「海（うみ）」長谷川昇氏（し）の「習作（しうさく）」鈴木梅月氏（し）の「朝（あさ）の光（ひかり）」石川伊十氏（し）の「習作少女（しうさくしようじよ）」要（よう）するに此人（このひと）の作（さく）としては余（あま）り感服（かんぷく）の出来（でき）ない方（ほう）だ。＠田中宣三氏（し）「港（みなと）の夕照（ゆうしよう）」気（き）の利（き）いた絵（え）だが余（あま）り筆（ふで）の繊巧（せんこう）に流（なが）れた気味（きみ）がある。＠山脇信徳氏（し）「午前（ごぜん）」同（どう）一の場所（ばしよ）で午前（ごぜん）と午後（ごゞ）のスケツチが出（で）て居（い）るが午後（ごゞ）の方（ほう）よりは此方（このほう）が遥（はる）かに統（とう）一がある「雨（あめ）の夕（ゆう）」も面白（おもしろ）い出来（でき）ではあるが全体（ぜんたい）に勝（か）ち過（す）ぎたコバルトが目（め）に付（つ）く。＠須田信一氏（し）「初夏（しよか）の熱海（あたみ）」空（そら）の色（いろ）と前景（ぜんけい）に多少不調和（たしようふちようわ）な処（ところ）はあるが山（やま）の色（いろ）と筆（ふで）に面白（おもしろ）い特色（とくしよく）がある。＠相模金三郎氏（し）「くだもの」手際（てぎわ）の好（よ）い処（ところ）は認（みと）める。＠加藤静児氏（し）の「午後（ごゞ）の博物館（はくぶつくわん）」清水勘一氏（し）の「小雨（こさめ）の海（うみ）」等数（とうかず）ある中（なか）にはまだまだ棄（す）て難（がた）いのがないでもないが取立（とりた）てゝ評（ひよう）する程（ほど）のものも又少（またすく）ないので先（ま）づ此辺（このへん）で筆（ふで）を擱（お）く事（こと）にする参考品（さんこうひん）の部（ぶ）には有益（ゆうえき）なものが列（なら）べられた湯浅氏（ゆあさし）の模写（もしや）に成（な）るヴエラスケズのが最（もつと）も結構（けつこう）でコランの草画（そうぐわ）は流石（さすが）に旨（うま）いものだと感心（かんしん）した。 |
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