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白馬会関係新聞記事 第9回白馬会展

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白馬会画評(はくばくわいぐわひやう)(五)
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| 四絃 | 都新聞 | 1904(明治37)/11/18 | 5頁 | 展評 |
第(だい)七室(しつ)の山本森之助氏(やまもともりのすけし)の暮(く)れ行(ゆ)く島(しま)ハ雲(くも)などに写生(しやせい)で無(な)い痕(あと)が残(のこ)つてゐて水(みづ)の左手(ひだりて)の方(はう)ハ少(すこ)しく段(だん)が付(つ)いてゐる、其上少(そのうへすこ)し描(か)き過(す)ぎてゐる位(くらゐ)で有(あ)る、秋(あき)の谷川(たにかは)、妙義山(めうぎさん)、なども他(た)に一寸真似(ちよつとまね)の出来(でき)ぬ根菊(ねぎく)の好(よ)さ加減(かげん)ハ珍(めづ)らしい位(くらゐ)で有(あ)る、跡見泰氏(あとみたいし)の画(ぐわ)でハ夏(なつ)の雲(くも)が最(もつと)も面白(おもしろ)く色彩(しきさい)の上(うへ)に一種(しゆ)の生気(せいき)が有(あつ)て一派(ぱ)を為(な)してゐる、@第(だい)八室(しつ)ハ水彩(すゐさい)パステルで三宅克己氏(みやけこくきし)が最(もつと)も多数(たすう)の出品(しゆつぴん)をしてゐる、初秋(はつあき)、と秋(あき)の日(ひ)ハ簫酒(せうしや)たる小品(せうひん)で、調子(てうし)の確実(かくじつ)な上(うへ)に色彩(しきさい)の生々(なまなま)したのハ嬉(うれ)しい、暴模様(あれもやう)ハ筆力(ひつりよく)が充分(じうぶん)に見(み)えて巴里(ぱりー)の紀念(きねん)として一昨年出品(さくねんしゆつぴん)された風景(ふうけい)などの面影(をもかげ)が有(あ)る、@中沢氏(なかざはし)の水彩(すゐさい)でハ一九三の静物(しづかもの)が面白(おもしろ)い、@橋本邦助氏(はしもとくにすけし)の水彩(すゐさい)でハ辻馬車(つじばしや)、浅草観音堂内(あさくさかんおんだうない)などの風俗(ふうぞく)ハ面白(おもしろ)く夏(なつ)の雲(くも)の波(なみ)などハ巧(たくみ)なものだが波(なみ)の泡(あは)が少(すこ)しく雪(ゆき)の様(やう)で有(あ)る、@第(だい)十室(しつ)でハ丹羽林平氏(にはりんぺいし)の梨畑(なしばたけ)ハ場中(ぢやうちう)の大作(たいさく)で有(あ)るが下(した)に引張(ひつぱ)つて取(と)る様(やう)な女(をんな)の手(て)ハ可笑(をか)しい、梨子(なし)を取(と)るには下(した)から上(あ)げる様(やう)にしなければ取(と)れぬものだと云(い)つた見物(けんぶつ)の百姓(じやう)が有(あ)つた、此画(このゑ)などハ特色(とくしよく)の無(な)い画(ゑ)で面白(おもしろみ)の少(すく)ない事(こと)おびたゞしいものだがベルの具合(ぐあひ)は確(たし)かなものらしい

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