洋画界四五人の話（はな）しが抬（も）ち上（あが）つて天（てん）之に和（わ）し地（ち）之に和（わ）し人亦之れに和（わ）したといふ大業（おほげう）な訳（わけ）でもなかろうが五十人ほどの発会（はつくわい）となツた、時（とき）はこの六日処（ところ）は根津の仙境（せんきやう）と聞へた神泉亭‥‥門内（もんない）に白馬会々場と筆太（ふでふと）の立札（たてふだ）とは中々威勢（なかなかいせい）がよかツた＠白馬と申しても白居易がうたへる『翩々白馬称金羈、領綴銀花尾曳糸』といふ様（よう）な白馬（はくば）も見（み）へなかツた席上（せきじやう）しろうまの徳利（とくり）もなかツた実は白馬会のシンボルとして一杯丈（いつぱいた）けは侑（すゝ）める趣向（しゆかう）もあツたが憾（うら）むべし是（これ）からは焼酎（せうちう）の時節（じせつ）お尋の品（しな）はとのことで折角（せつかく）の趣向（しゆかう）も否違（ふい）になツたとのこと＠洋画家彫刻家（ようぐわかてふこくか）外に日本画家（にほんぐわか）も見（み）へた太陽めざまし白百合毎日時事さては博文館の人々なども見へた演説（えんぜつ）などの理屈（りくつ）はなく夜更（よふ）けまで飲（の）み盡（つく）し興（きやう）じ盡（つく）して此に白馬会の誕生式（たんぜうしき）を済（す）ました＠無新旧、無南北、和気靄然（わきあいぜん）と根津の森深（もりふか）く罩（こ）めた此塩梅（このあんばい）で美術家は真箇美術家（しんこびじゆつか）たる心事（しんじ）を持（も）ち合（あ）ふて斯道（このみち）の発達（はつたつ）を謀らば紛紜（ふんうん）も軋轢（あつれき）もあつたことかは （ゝゝ記す）
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