屏風は、もとは風をよけるための建具として使われていましたが、その表面に絵や書を描くことがおこなわれてきました。屏風は古代、中国からもたらされましたが、近世の日本では数多くの屏風絵作品が制作されました。屏風は好きな場所に移動することができ、華やかに空間を演出することができます。使わない時はたたんでしまっておける便利な絵画形式です。また曲げる角度、広げ方によって、幅が調整でき、それによって絵の見え方も変わります。紙の蝶番で各パネルはつなげられており、山折り、谷折り、どちらにでも折り曲げられる特徴があります。屏風は贈答品としても人気があり、江戸幕府から外国への贈り物として海を渡った屏風もあります。

最も一般的な形式が6枚のパネルを連結させた六曲屏風ですが、そのほか二曲、四曲、八曲、十曲屏風もあります。六曲屏風2つを1セットにしたものを六曲一双、1つのみのものを六曲一隻、と呼びます。もともと1隻屏風として描かれたものもありますが、伝来の過程で一双屏風の片方が失われて現在は一隻屏風として伝えられているものもあります。

屏風の構造画像
屏風の構造

絵画は屏風の一番上の紙に描かれていますが、その下には6層ほどの紙が重ねて貼り込まれています。こうした多層構造は、本紙をサポートするほか、湿度を調整する役割も果たしています。下地の木組みや紙は経年により劣化して、その下地の損傷が本紙にも影響する場合があります。そこで修復の際は、屏風全体を解体して、本紙を取り出し、損傷などがあれば本紙の裏側から補修し、新たな下地に取り替えます。

屏風は大きな画面の作品も多く、絵が描かれる本紙そのものにも丈夫さが求められます。伝統的に屏風の本紙には雁皮という繊維を用いた雁皮紙(がんぴし)、竹の繊維を原料とする竹紙(ちくし)が用いられていることが多くみられます。

日吉山王祭礼図屏風画像
日吉山王祭礼図屏風画像
「日吉山王祭礼図屏風」
六曲一双 17世紀 ハンブルク美術工芸博物館蔵

日本絵画の修復