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ニュウハクシミは単為生殖を行うことが明らかとなっており、これにより繁殖力が高いため、一度個体数が殖えると完全に駆除することが困難である。また、一個体からでも繁殖が可能なため、博物館資料や梱包資材等に付着し、資料の移動にともなって分布域を拡大していると考えられる。
分布域は、2022年に初めて日本から報告された時には5都道県であったが、2025年9月末時点では19都道県となっており、拡大傾向にある。
これまでに文化財への直接的な被害は報告されていないが、他のシミ類と同様に紙の表面を摂食するため、屏風や襖、掛け軸などの紙資料を食害する可能性が高い。
段ボールはニュウハクシミにとって非常に住みやすい空間となっており、段ボールの中で繁殖が起きやすい。そのため、段ボールや巻き段での保管を極力減らし、スチール製やプラスチック製のケースに資料を入れる。やむを得ず、段ボールを使用する際には、床置きはせず、棚などの一段高い場所に置くことを心掛ける。フッ素樹脂テープのような摩擦の少ないテープの使用も有効である。
(燻蒸剤が少なくなりつつあり、環境や人体への影響を考えると大規模燻蒸は現実的ではない)
これまでの研究で、蟻用の毒餌(ベイト剤)によって飼育系において個体群が死滅に至ることが確認されており、ニュウハクシミに有効だと考えられる。また、資料には使うことができないが、ピレスロイド系の殺虫剤での防除も有効であり、ニュウハクシミが歩行する壁際への散布で効果がある。
ニュウハクシミを含めシミ類は、紙質のもの以外にもたんぱく質必要としており、昆虫の死骸やホコリに含まれる人の髪などを摂食するため、除塵清掃も効果的である。
| ・ | New records of Ctenolepisma calvum (Ritter, 1910) (Zygentoma, Lepismatidae) from Japan. |
|---|---|
| Megumi Shimada, Hiroki Watanabe, Yukio Komine, Rika Kigawa, Yoshinori Sato. Biodiversity Data Jornal. | |
| DOI: 10.3897/BDJ.10.e90799 (2022) | |
| ・ | マダラシミおよびニュウハクシミに対するベイト剤の殺虫効果 |
| 小野寺裕子・島田潤・渡辺祐基・小峰幸夫・木川りか・佐藤嘉則 | |
| 『保存科学』第62号(2023) pp.193-198 |

