文化財情報資料部

文化財情報資料部は、文化財に関する専門的アーカイブを構築して外部に発信するほか、所内の情報システムを管理し、広報企画事業を行い、資料閲覧室や画像情報室を通じて資料の作成と公開を担っています。また、日本及び東アジアの美術に関する調査研究を行い、美術史研究のための高質な資料や情報を作成し、その成果を積極的に刊行することを目指しています。美術の研究に際しては、時代や地域をほぼ隙間無くカバーして研究するのみならず、時代や地域などの枠にとらわれない広領域的な研究テーマを設定して、他の分野との連携を進めています。

  文化財情報研究室
  システムの管理と運営を行い、広報事業(年報などの編集、刊行)やホームページの作成・運用を通じて、研究成果の公開を行っています。
 
画像情報室
  各研究部門の依頼や外部機関の要請により、文化財を撮影し、画像を形成するほか、光学的理論やデジタル技術を応用した最先端の画像形成を開発・駆使し、視覚的な研究情報を提示しています。
[ 画像形成技術の開発に関する研究 ]
   
  文化財アーカイブズ研究室
  文化財の専門的アーカイブとして、文化財に関する画像や図書等の情報・資料を収集、整理、公開するとともに、文化財所有者からの調査研究に関わる依頼を調整し、その成果のとりまとめを行います。
 
資料閲覧室
  受け入れた文化財関連の図書や定期刊行物、展覧会カタログ、写真資料などを整理し、月・水・金曜日に一般の利用者に公開するほか、各種の書誌や研究情報のデータベースを作成しています。また、所蔵資料のデジタル化と目録作成を進め、刊行物としても提供しています。図書資料、写真資料等のオンライン検索に対応するとともに、写真資料は主題別・作家別に分類・配架し、閲覧に供しています。
[ 東文研 総合検索 ]
   
  日本東洋美術史研究室
  江戸時代までの日本と東アジアの美術を研究しています。美術の価値形成の多様性を解明するため、美術史研究のための資料学的な基盤を整備しています。
   
  近・現代視覚芸術研究室
  明治以降の日本美術を研究しています。近現代美術に関わる研究資料を収集、整理し、研究手法を開発するとともに、現代美術の動向を調査、研究しています。また、近現代美術の研究者ネットワークを構築しています。
   
  広領域研究室
  美術のジャンルや時代、地域を横断する課題に取り組み、文化財に関わる諸分野と連携して、広い視野から美術を研究し、美術の材料、技法、制作過程等を明らかにしています。
   
  文化財情報資料部は以下の事業を行っています。
 
(1) 文化財に関する専門的アーカイブの拡充
他機関との共同調査研究により高精細デジタル画像を作成するとともに、当所の各研究部門と共同で画像資料のデジタル化等を推進し、画像管理と内部閲覧を目的とする画像データベースを運用しています。また、これらの画像資料に、文献資料、および研究的情報を付加し、より充実した文化財アーカイブの形成を進めています。

(2) 研究情報の自己評価
所内の各部門が遂行する研究の新しい成果を共有し、かつ互いに評価し合う場として総合研究会(年5回程度)を企画、開催するとともに、各年度の研究や事業を総括した年報を編集しています。

(3) 研究情報の外部発信と共有化
研究情報は、ニュースレター・概要・年報・ウェブサイト等によって提供しています。ウェブサイト及び外部公開データベースの一層の充実を目指します。広報委員会の情報システム部会を運用し、情報システムの効率化とウェブサイトの充実について協議し、LANを活用して所内の情報化を進め、情報公開の要請に即応できる体制を整えています。

(4) プロジェクト研究
歴史的な観点から美術を捉えることによって、モノに対する理解を深めると同時に、その成果を文化財の保存、修復、保護、公開に役立て、かつ常に新しい研究方法と研究領域を開拓して、社会に貢献することを目指します。美術研究所の創設以来、東京文化財研究所が今日まで果たしてきたアーカイブとしての任務を認識し、美術研究のための資料や情報を、より高品質で信頼性のあるものにすること、そしてそれらの有効な活用と社会への還元を心がけています。また、新しい研究方法や研究領域の開拓のためには、関連分野との連携のみならず、国内外の研究機関や研究者との研究交流が重要と考え、研究のためのネットワークを構築し、その中心的役割を担う努力を続けています。その実現のために、高精細デジタル画像の応用に関する調査研究、東アジアの美術に関する資料学的研究、近現代美術に関する総合的研究、美術の技法・材料に関する広領域的研究を遂行します。

(5) 研究成果・研究情報の公開
『美術研究』(年3冊)、『日本美術年鑑』(年1冊)、種々の報告書を公刊して、調査研究の成果を公表しています。また研究成果の一端を、一般向けの講演会であるオープンレクチャーにて披露しています。

(6) 黒田記念館の運営と黒田清輝に関わる研究情報の公開
黒田清輝(1866-1924)の遺産に基づいて造られた黒田記念館には、東京文化財研究所の前身である美術研究所と黒田記念室が置かれました。独立行政法人国立文化財機構の発足に伴い、黒田記念館と黒田清輝作品の管理を東京国立博物館が行うことになりましたが、作品と研究成果の展示については当部が担当します。また当研究所のウェブサイトで、作品の高精細画像や黒田が書いた日記のテキスト等、黒田研究のための基礎資料を公開しています。