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年報の発刊にあたって

 平成21(2009)年度は、平成18年度から開始された第2期5カ年計画の第4年度にあたります。文化財機構が定めた中期計画の基本方針にありますように、当研究所の役割・任務は、「わが国の文化財の研究を、基礎的なものから先端的・実践的なものまで、多様な手法により行い、その成果を積極的に公表する。また、文化財担当者の研修、地方公共団体への専門的な助言を行う。さらに、機構の有する保存科学・修復技術に関する知見・技術を集約し、わが国の拠点と師弟の役割を果たす。また、世界の文化財の保存・修復に関する国際的な研究交流、保存修復事業への協力、専門家の養成、情報の収集と活用等を実施し、文化財保護における国際的拠点としての役割を担う」ことにあります。
 この方針に従って今期に計画された各プロジェクトは、最終的な局面を迎えそろそろまとめる段階になっています。関係機関の協力や当研究所に対する関心の高さのおかげもあって、当研究所の立案した多くの計画は当初の目的を達成すべく順調に実施されているということができます。
 各種プロジェクトや刊行物のうち、おもなものについて少し紹介しておきます。まず、企画情報部で行っている「高精細デジタル画像の応用に関する調査研究」ですが、昨年の平等院鳳凰堂の仏後壁の画像解析の第2陣である『近赤外画像編』、および奈良国立博物館との共同研究『春日権現験記絵披見台』などの報告書を刊行し、光学調査の有効性とその応用性について検証することができました。 無形文化遺産部では、無形遺産の調査研究の一環として研究協議会を持ちましたが、「無形の民俗の伝承と子供の関わり」というテーマで、子どもに焦点を当て伝統文化の伝承活動を考えました。伝統文化の伝承という観点から、早くから地域の活動にかかわることの必要性や重要性が指摘されています。
 保存修復科学センターでは、引き続き国民的関心の高い高松塚古墳およびキトラ古墳の壁画保存のための調査研究を最重点課題として奈良文化財研究所と一体的に組んでいます。高松塚古墳の壁画については、破損状況の把握に努めるとともに脆弱化した個所の強化を行っています。キトラ古墳の壁画については、集中的に漆喰の取り外しを行っていますが、過年度取り外した「青龍」について保存処理ののち公開のため額装を施しました。「朱雀」については平成22年度の公開へ向けて保存処理を進めています。
 文化遺産国際協力センターでは、諸外国の文化財保護のための技術協力事業を行っていますが、アフガニスタンなどでは現地での技術協力が困難なこともあり、研修に必要な教材の作製とともに専門家を国内に招聘して養成研修を行うことに重点をおいた事業を推進しています。
 調査研究の成果(報告書や関係学会での発表等)や、文化財情報の公開のための各種出版物の刊行も順調に行われています。平成21年度は当研究所の歩みを記す『東京文化財研究所75年史(本文編)』を刊行しましたが、これは一昨年刊行した『同(資料編)』に続くものです。このほか、黒田清輝の欧文書簡を中心とした『黒田清輝フランス語資料集』は、今後の近代絵画研究の一助となることが期待されています。 また、研究所では文化財に関する様々な公開講演会を実施し、ホームページでの情報公開の充実を図るなど地域連携を念頭に置いた活動にも努めていますが、子ども向けのパンフレット「東京文化財研究所ってどんなところ?」を周辺の学校に配布したほか、隣接する区立上野中学校の協力を得て研究所の活動を紹介した出前展示会を開催するなど学校教育との連携にも努めました。
 このように、多方面にわたる調査研究、情報公開等を行っていますが、今後とも当研究所の活動に対し一層のご理解ご協力をお願いする次第です。

 平成22年(2010)5月

独立行政法人国立文化財機構
東 京 文 化 財 研 究 所
所 長   亀  井  伸  雄
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