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年報の発刊にあたって

 2007(平成19)年度は、第二期五ケ年の中期目標・計画実施の第2年度に当たり、その途中ではありましたが、昨年4月1日付けで、これまでの独立行政法人文化財研究所は、独立行政法人国立博物館と統合され、新たに独立行政法人国立文化財機構が設置されるとともに、当研究所はその一施設と位置付けられましたが、(独法)文化財研究所時代の中期目標・計画はほぼそのまま継続されることになりました。
 ただ、この統合に当たっての組織見直しにより、当研究所の組織は大きく改変されることになりました。即ち、美術部と企画情報部が統合されて新たな企画情報部に、保存科学部と修復技術部も統合されて新たに保存修復科学センターが設置され、このセンターには、3博物館と奈良文化財研究所の保存・修復関係者が併任され、この分野のナショナル・センターとしての性格を有することになりました。また、東京文化財研究所の前身であった帝国美術院附属美術研究所発祥の地でもある黒田記念館及び黒田清輝関係絵画類は、一括で東京国立博物館に移管されました。しかし、その展示公開面については、当研究所企画情報部員によって引き続き継続運営されています。我々としては、これらの改編を前向きに捉え、新たな組織体制の下に、常に我が国における文化財の調査・研究の中核機関であるとの認識で、国の文化財行政の基盤を支える立場をより堅持して参りたいと考えております。
 このような状況下ではありましたが、2007年度の活動を回顧しますと、先ず、最重要課題の一つであった高松塚古墳の石室解体が恙なく終了し、また、同時並行で実施していたキトラ古墳の壁画取り外しも、その極く薄い壁画層を剥ぐため当研究所研究員によって開発された工具により(特許申請済み)順調に進められています。この両事業が大きな成果を得ている大きな要因としては、(独法)文化財研究所時代に培った、奈良文化財研究所との緊密な連携協力体制が大きく与っているものであり、これだけではなく、保存修復や国際協力の促進のためにも、その関係は将来にわたって堅持しなければならないと確信しております。
 このような連携協力は、当然機構全体としても必要であり、例えばこの統合で期待されている保存修復科学センターの例では、早速連絡協議会を立ち上げるとともに、関連情報の共有化や共同の調査研究体制を図りつつあるところです。
 国際協力の分野では、受託している国際文化遺産協力コンソーシアムの活動も進展し、新たな重要拠点事業実施へ向けての準備も整いつつあります。西アジア地域の一部事業については、情勢の悪化から日本での長期研修の実施などにより、国際協力の一番重要な方策である人材養成の成果を得ることができましたし、他地域での事業もほぼ所期の目的を達することができました。
 このような有形文化遺産分野だけではなく、無形においても、ユネスコの無形文化遺産条約の成立を契機として、我が国の無形文化財保護の長く先進的な取り組みの経験を活かすための日本文化と関係の深いアジア諸国の無形文化遺産保護に対する支援協力も期待されています。そのため、昨年度は、アジア諸国の研究者・研究機関とのネットワークの構築を開始するとともに、国際研究会の開催、ACCUによるアジア・太平洋地域の国際研修事業を共催実施しています。
 ところで、当研究所の調査研究の特性として、基礎研究・基礎資料の集積を基盤とし、科学技術を活用した先端的・実践的研究があげられますが、それら調査・研究成果の諸情報は、常に発信公開されることが望まれています。このことは、関係する専門家の世界だけではなく、情報システムの充実・文化財アーカイブズの拡充などによる、より幅広い普及・啓発、さらにはあらゆる機会を通じての広報活動により、国内外の多くの人々にご理解をいただく努力も重要と考えております。この方針に沿い、昨年度は、数多くの報告書や研究誌、刊行物類とともに、新たに当研究所の75年史(資料編)の刊行や、東文研ニュースの英語版発行も開始するなど、情報発信のさらなる充実を推進することができました。
 今後とも、東京文化財研究所の活動に対し、皆様のより一層のご理解ご協力をお願い申し上げる次第です。

 2008(平成20)年5月

独立行政法人国立文化財機構
東 京 文 化 財 研 究 所
所 長   鈴  木  規  夫
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