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『東京文化財研究所蔵書目録3 日本東洋古美術関係 和文編』


3. 織田文庫について

織田文庫について

 石版画家・織田一磨(1882-1956)が収集した葛飾北斎の絵入り版本を中心としたコレクションで、昭和45年(1970)、東京国立文化財研究所(現・独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所)に収蔵された。
 織田は北斎など浮世絵の研究者としても知られ、雑誌『アルト』に「北斎絵本解題」(以下「解題」)1~5(紀伊国屋書店 1928~29)と題し北斎の絵本35冊について紹介している。うち23冊は織田の私蔵本で、現在織田文庫に収蔵されている。織田は絵入り版本の収集に際し、フランスの作家で日本美術のコレクターとして有名なE.ゴンクール(1822-1896)の著書 “Hokusai” (『北斎』 1891)をもとに永井荷風(1879-1959)が作成した「北斎年譜」(『三田文学』4-10 1913)を参考にしている。例えば、『光悦正流盆画独稽古 初篇』(目録番号 8094)については、「ゴンクウルの年譜に記載してあるので、私も求めたが、これは北斎の筆かどうか、研究の餘地がある。」(「解題」1 no.5)と述べている。
 織田文庫は東京文化財研究所の分類を用いず、織田独自の分類を引き継いでいる。織田が「解題」で述べている狂歌本や挿絵本を除いた「文學的文句入の繪本を除外して、繪ばかりで成立してゐる本統の意味の繪本」は全5分類のうち第1分類(現「織田1」分類)に属す。


(『織田一磨展』町田市立国際版画美術館2000より)
織田一磨(1882-1956)
東京芝生まれ。絵画を川村清雄に、石版画を金子政次郎に学ぶ。大正5年(1916)頃から本格的に石版画制作に取り組み、「東京風景」など都市の景観を描いた連作で知られる。『浮世絵十八考』(春陽堂 1926)、『北斎』(アルス美術叢書 1926)など浮世絵に関する著作も多数。
殊に面白いのは「野分」とか「月下の往来」「夏の往来」「目に青葉」の如き其時代の民衆生活を扱った畫題である。(中略)表題は麁畫だが内容は密畫で北斎畫本の内でも傑作に類するものである。色彩は無くても決して差支ない。傳心畫鏡よりもいゝ本だと思ふ。
(織田一磨「北斎麁畫」解題より)
織田文庫所蔵の絵入読本

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