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藤島武次氏（ふぢしまたけじし）の『造花』此（これ）もなかなかの大作（たいさく）で作（さく）もなかなか上出来（じやうでき）だ図柄（づがら）を云（い）へば一人（にん）の娘（むすめ）が白地浴裕（しろぢゆとり）を着（き）てテーブルの前（まへ）の椅子（いす）に腰（こし）を掛（か）けて左（ひだり）の手（て）に造花（つくりばな）の花（はな）を持（も）ち右（みぎ）に葉（は）を持（も）つて今如何（いまいか）に取付（とりつ）くるが善（よ）いかを考（かんが）へて居（ゐ）る処（ところ）で其（そ）れから娘（むすめ）の前（まへ）には造花用（つくりばなよう）の圧出（おしだ）し機械（きかい）が置（お）かれ卓（たく）の上（うへ）には造花用（つくりばなよう）の色布（しきふ）が有（あ）つて卓（たく）の真中（まんなか）には小（ちい）さな花立（はなたて）に白百合（しろゆり）の一輪（りん）を挿（さ）されて有（あ）る其（そ）れから卓（たく）の真先（まさき）の窓（まど）が半分開（はんぶんひら）いて居（ゐ）て先（さ）きは炎々燃（えんえんや）く如（ごと）き夏景色（なつげしき）が人家（じんか）の軒（のき）で現（あら）はされて居（ゐ）る処（ところ）だが人物（じんぶつ）は只目（たゞめゝ）の方向（はうかう）が不明瞭（ふめいれう）で何処（どこ）を見（み）て有（あ）るか分（わか）らないのみで著物（きもの）と云（い）い体格（たいかく）と云（い）い書（か）きこなしが実（じつ）に御上手（おじやうず）だ其（そ）れから卓上（たくじやう）の白百合（しろゆり）がかげは空色（そらいろ）になるだろをが余（あま）り空色過（そらいろす）ぎて居（ゐ）る為（た）めにコバルト百合（ゆり）としか見（見）へないのは遺憾（ゐかん）だ其（そ）れから窓先（まどさ）きの景色（けしき）が非常（ひじやう）に御手軽（おてがる）に出来上（できあが）つて返（かへつ）て面白（おもしろ）く又全体（またぜんたい）に調支（てうし）を持（も）たして居（ゐ）るように見（み）へるのは感心（かんしん）の外（ほか）ない概（がい）して色（いろ）が善（よ）すぎるのかは知（し）らんが少（すこ）しはで過（す）ぎるかの様（やう）に見受（みう）けた其（そ）の他（た）『霽（は）れ模様（もやう）』だの『緑林（りよくりん）』だのもなかなか器用（きよう）に出来（でき）て面白（おもしろ）い処（ところ）も有（あ）る様（やう）だ其（そ）れから『桃の花』の写生（しやせい）が沢山有（たくさんあ）るが皆々面白（みなみなおもしろ）い様（やう）に感（かん）じた◎山本森之助氏（やまもともりのすけし）は例年（れいねん）に比（ひ）し非常（ひじやう）の少数（せうすう）だで當会只（たうくわいたゞ）三枚（まい）を見（み）るばかりだ其（そ）れで景色（けしき）も内地（ないち）の景色（けしき）と違（ちが）つて皆（み）な大（おほ）き様（やう）だ出品中（しゆつぴんちう）の最大（さいだい）なる『雲の峰』は夏気最（かきもつと）も甚（はなは）だしき午後（ごゝ）の景色（けしき）で空（そら）にはウネウネした丁度（ちやうど）ポテトヲ的（てき）の白雲（はくうん）が十重二十重（とえはたえ）に現（あら）はれ実（じつ）に壮快（さうくわい）の気持（きもち）が充分書（じうぶんか）き現（あ）らわされて実（じつ）に上作（じやうさく）と云（い）はざるを得（え）ん其（そ）れから他（た）の二枚（まい）の小（ちい）さな景色（けしき）は大（おほ）きい方（はう）に比（ひ）して作（さく）が余程落（よほどお）ちて居（ゐ）るよに見（み）へる |
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