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白馬霜（はくばしも）にいなゝいて秋気清（しうききよ）しではなかつた上野（うへの）に開（ひら）かれた白馬会（はくばくわい）の展覧会（てんらんくわい）は毎年（まいねん）に比（ひ）して寧（むし）ろ見劣（みおと）りがすると云（い）ふ世評（せひやう）があるがさうかも知（し）れない場裡（じやうり）は殆（ほと）んど「スケツチ」の小品（せうひん）を以（もつ）て埋（うづ）められて居（お）るから自然専門家（しぜんせんもんか）ならでは一々立止（いちいちたちど）まつてまで看（み）る人（ひと）はなく只（ただ）ズーツト勧工場（くわんこうば）でも素見（ひや）かす様（やう）に廻（まは）つて仕舞（しま）つてオヤオヤ是（これ）でお仕舞（おしまひ）かと頬（ほゝ）ふくらす人々（ひとびと）が十中（ちう）の七八を確（たし）かに占（し）めて居（を）る此（この）ふくれた頬（ほゝ）から白馬会展覧会（はくばくわいてんらんくわい）の退歩（たいほ）と叫（さけ）ぶ声（こゑ）が出（で）るか出（で）ぬにしても与（あづか）つて力（ちから）があるらしい然（しか）し昨年（さくねん）に比（ひ）しては其作品（そのさくひん）の数（すう）こそまされ佳作（かさく）として見（み）るべきものは余程少（よほどすく）ないやうである扨同派（さてどうは）は元来（ぐわんらい）「イムプレツシヨンニスト」で謂（いは）ゆる感情（かんじやう）を現（あらは）すのに尤（もつと）も熱心（ねつしん）だが今一（いまひと）つ同派（どうは）に願（ねが）ふのは衣服（いふく）を描（えが）く事（こと）をも学生（がくせい）に教（おし）へられたい衣装（いさう）の皺襞（しわひだ）などは余暇（よか）に遣（や）れば沢山（たくさん）だと云（い）ふ考（かんがへ）ではマサカあるまいが服（ふく）の品質（ひんしつ）を現（あらは）すと云（い）ふ事（こと）は中々容易（なかなかようい）でない一（いつ）の「コンポジシヨン」を作（つく）つても矢張衣紋（やはりえもん）に依（よつ）て図中（づちう）の人物（じんぶつ）に温和（おんわ）と厳粛（げんしゆく）との風采（ふうさい）を与（あた）ふるは今更申（いまさらまを）す迄（まで）もない是（こ）れ今回（こんくわい）の白馬会展覧会（はくばくわいてんらんくわい）の中（うち）で後進諸氏（こうしんしよし）の人物画（じんぶつぐわ）を見（み）て第（だい）一に感（かん）ずる処（ところ）また第（だい）一に願（ねが）ふ処（ところ）である△絵画共進会（くわいぐわきようしんくわい）（日本美術院派（にほんびじゆつゐんは））のでは新思想（しんしさう）を社会（しやくわい）に紹介（せうかい）するのが主義（しゆぎ）だ相（さう）だが別段新思想（べつだんしんしさう）として見（み）るべきものもなく却（かへつ）て西洋画（せいやうぐわ）の焼（や）き直（なほ）し然（ぜん）とした作品（さくひん）も見（み）えるやうで日本画（にほんぐわ）の為（た）めに嬉（うれ）しくない同会々員諸氏（どうくわいくわいゐんしよし）の一顧（こ）を煩（わづら）はしたい処（ところ）である |
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