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一体（いつたい）私共の絵は其の時其の瞬間に起つた感じを直ちに写しとると云ふのですから大作の比較的（ひかくてき）善くないのも無理（むり）はないです腕が足りないからの何んのと云ふのでなく其の瞬間の感（かん）じを十日も廿日も持続して行（ゆ）く事（こと）が難いからなのです、＠色が汚ないと云ふ評が大分ある様（やう）ですが何をスタンダードにして云ふのでしょうか或る人の汚いと云ふのを或る人は又打ち消してるでしよう此（これ）は批評（ひへう）する方が無理（むり）だと思ひます日向には日向の色があるし日蔭には日蔭の色があるし日蔭の絵ばかり見（み）て一様に暗（くら）い暗いと御仰（おつしや）るが日蔭の暗いのは常り前（まへ）でサア、＠小督ですかアレは壁画の積（つも）りで書いたのですから其の積（つも）りで批評して貰はなければこまるシヨールを着て居る婦人を日本画だと云のは何様（どう）云ふ意味（いみ）か私には解（わか）りませんマア日本で画いたのだから日本画でしようよ＠素人評（しろうとへう）もホントの素人評ならいゝですが何様も其の素人が方々の画かきへ行つちやア聞きかぢつて来（き）た事を書き立てるのが多い様で是れでは素人評でも何んでもありません矢張（やは）り美術には美術の批評家（ひへうか）が必要（ひつえう）ですナ＠青年の出来は一体にいゝです中には私（わたくし）なぞ遠く及ばないと思（おも）ふのもあります広瀬のですかアレの中では矢張り岩のある海岸のがいゝでしよう桜の方は締りがありません和田のでは女より三保の富士の方がいゝ様です藤島君の納涼もまア私共（わたくしども）の目から見（みれ）ばいゝ出来（でき）ですナ今日貴方の処に出て居る白馬会々員某氏の評と云ふのはアレは誰（だれ）なんですか仲々（なかなか）よく評してありますアレに全たく違（ちがひ）なしですマリカセツトのを母子の情掬すべしつて御仰いましたが私に云はせると情掬すべしと云ふより寧（むし）ろ能く写（うつ）してあると云ひますナ日本の今の批評家は皆意匠とか何んとか云ふ事を八釜（やかま）しく云つて他は少（すこ）しも顧（かへり）みない様ですが意匠ばかりで果して絵が作られましようか此の葬式なぞも世間（せけん）で非常に批判がいゝ何故（なにゆへ）いゝかと云ふと意匠がいゝのだと云ふけれど此れが非常に青年には毒になるのです同じ文章（ぶんしやう）を作つたり小説を書いたりするにも筋とか趣向とか云ふ事は文を作る事が出来る様（やう）になつてから後（のち）の話（はな）しでしょう白馬会が取つて行く方針も此処（こゝ）なんです＠今度は外国人の出品を多くして貰いました此（こ）れは余り世間（せけん）で乱暴な批評をしますから夫等の人に見せるためと又一つには画かきのため会員（くわいゐん）のためなんですアゝ云ふものでも見（み）せませんと書くのに見當（けんたう）が付かなくて何処まで行つていゝやら分（わか）りませんからナそれに教室（けうしつ）の中ばかりではいくら進歩しても教師以上に達する事が出来（でき）ませんので＠見（み）る方（はう）も幼穉なれば書く方も幼穉、幼穉の程度はまあ同じ位でしようダが絵なんかの幼穉（ようち）はまだようござんすヨ人が迷惑（めいわく）するからと云つてマア灰神楽（はいかぐら）の中へ飛び込んだ様の気がするとか黒田の絵を見（み）て逃（に）げ出（だ）したとか云ふ位の事ですから、 |
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