| 流石西洋人（さすがせいようじん）は西洋人丈（せいようじんだ）けあつて皆落着（みなおちつ）いて居（ゐ）て中々（なかなか）いゝ、其（そ）の中（うち）にもコランの『少女（せうぢよ）』（九一）、ウヰッツマンの『月夜村落（げつやそんらく）』及（および）『秋（あき）の落葉（おちば）』は尤（もつと）もいゝ少（すこ）しもコセついて居（お）らん、マリ、カセットのパステル画（ぐわ）（色（いろ）チョークにて描（ゑが）きし母子（ぼし）の像（ぞう））や亜米利加人（あめりかじん）の景色画（けいしよくぐわ）なども余程面白（よほどおもしろ）い＠黒田氏（くろだし）の『小督』は自分（じぶん）でも色彩（いろどり）がきたないと云（い）つてるそうだが全（まつた）くそうだ。下図（したづ）の時一人々々（ときひとりひとり）書（か）き分（わ）けてあつた者（もの）の方（ほう）が反（かへ）つて善（よ）かつた様（やう）に思（おも）はれる然（しか）しあゝ云（い）ふ大（おほ）きなものを纏（まと）めるのは非常（ひじやう）の困難（こんなん）だ私は能（よ）くマアあれ丈（だ）けにやつたものだと思（おも）ふて居（を）る小品中（せうひんちう）に善（よ）いのが多（おほ）い様（やう）だショールを着（き）て腰（こし）を掛（か）けてる婦人（ふじん）の図（づ）（二０四）や干（ほし）ものゝ画（ぐわ）（二０六）なぞは中々善（なかなかよ）い＠久米氏（くめし）の『残▲』（ざんくん）（一０四）は善（よ）い出来（でき）だ長（なが）い草（くさ）のボウボウとして居（を）る具合（ぐあい）は余程能（よほどよ）く書（か）かれとる北蓮藏氏（きたれんざうし）の『野辺送（のべおく）り』は全体（ぜんたい）の組立（くみたて）はいゝが坊主（ぼうず）の後（あと）から来（く）る爺（ぢい）さんの体格（たいかく）がまづい其他一体（そのたいつたい）に形（かたち）の怪（あや）しい処（ところ）が多（おほ）い是（こ）れも出来上（できあが）つて見（み）ると反（かへ）つて下図（したづ）の方（ほう）が善（よ）かつたなぞと云（い）はれるものだらふ＠然（しか）し全体（ぜんたい）に於（おい）て若（わか）い人（ひと）の書（か）いたものは去年（きよねん）よりも善（よ）い様（やう）に見（み）える一生懸命（いつせうけんめい）にやつたらキツト成効（せいかう）するだらふと思（おも）ふ＠白馬会員某氏（はくばくわいゐんぼうし）の許（へう）＠広瀬勝平氏（ひろせかつへいし）の作（さく）は無暗（むやみ）に筆使（ふでづか）ひに苦心（くしん）してまゝ色彩（いろどり）を誤魔化（ごまくわか）したる痕（あと）あり＠山本森之助氏（やまもともりのすけし）は正直（せうじき）に描（ゑがか）れたれど余（あま）り緻密（ちみつ）に過（す）ぎて自然（しぜん）の美趣（びしゆ）を欠（か）ける様（やう）に思（おも）はる＠丹羽禮介氏（にはれいすけし）は筆使（ふでづか）ひにシヤレたがる癖（くせ）あり＠赤松麟作氏（あかまつりんさくし）はビチユーム臭（くさ）き処（ところ）ありとて旧派（きうは）に近（ちか）しなどゝ称（しよう）せらるれど書（か）きこなしは頗（すこぶ）るよし＠原田竹次郎氏（はらだたけじらうし）は色彩（いろどり）の研究足（けんきうた）らざる如（ごと）く椎塚修房氏（し）の作（さく）には締（しま）りと云ふものなし＠田中寅三氏（たなかとらざうし）は形（かた）ち確（たし）かならず中沢弘道氏（なかざわこうだうし）は色彩毒々（いろどりどくどく）しく磯野吉雄氏（いそのよしをし）は筆使（ふでづか）ひ重々（おもおも）しき憾（かん）あり久保田喜作氏（くぼたきさくし）は余（あま）りに白茶過（しらちやす）ぎたる様（やう）に覚（おぼ）ゆ |
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