東文研トップ > パネル展示 > [キトラ古墳壁画]パネル展示

[キトラ古墳壁画]-壁画の取り出しと修復作業について-
 東京文化財研究所エントランスホール パネル展示  終了しました

ご挨拶

 特別史跡キトラ古墳壁画保存修復事業は、東京文化財研究所と奈良文化財研究所が文化庁からの受託事業として、行っているものです。
 キトラ古墳は、平成12年に特別史跡に指定され平成13年より「特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会」が設置され、キトラ古墳の保存策に関して検討されてきました。 その結果、壁画の描かれた漆喰層の劣化が著しいことが判明し、壁画をすべて取り外した上で修復保存することが決定されました。これを受けて、当研究所は石室内環境を常時観測制御して、 黴の発生を抑えながら壁画の取り外しを進め、平成19年8月現在では、石室内に天文図のみを残すところとなりました。
 この展示では、壁画の取り外し方法、取り外された壁画、まだ石室内にある天文図などを実物大で展示すると共に、取り外しに用いた機材を展示し、壁画取り外しの実際と 壁画の状況をご覧いただき、これからも続く取り外し作業と壁画修復に関してご理解とご協力をお願いするものです。
 最後に現場で実際に取り外し作業を行っている修復技術者、様々な道具・機械の開発にご協力いただいている方々など、多くの関係者の皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。
(平成19年8月 東京文化財研究所 所長 鈴木規夫)


キトラ古墳壁画1

キトラ古墳壁画2

 キトラ古墳壁画3
(撮影:鳥光美佳子)
 

キトラ古墳壁画とその保存修復の概要

 キトラ古墳は、奈良県高市郡明日香村大字阿部山に所在する二段築造の円墳です。 墳丘の大きさは直径が約14m、高さが約3mです。石室は墳丘内部中央に南面して造られ、 熔結凝灰岩の切石から18枚を組み合わせて作られています。用いられた切石は、天井石と床石は各4枚、 東壁4枚(中央石は上下2石)、西壁3枚、南壁と北壁各1枚が用いられています。天井部分は高松塚古墳とは異なり、屋根型に削り込まれています。
 東壁には、中央に青龍が描かれ、その下部には、獣頭人身像の寅、卯、辰の三像が描かれていたと推定されていますが、確認されているのは寅像のみです。 西壁には、中央に白虎が描かれ、その下部には、獣頭人身像の申、酉、戌の三像が描かれていたと推定されていますが、確認されているのは戌像の一部と考えられる朱色の顔料のみです。 南壁には、鎌倉時代初めに穿たれたと考えられる盗掘口が開口しています。朱雀は大部分が損傷を免れました。 朱雀の下部からは泥に転写した形で獣頭人身像の午が発見されました。他には、巳と未が描かれていたと推定されています。 天井には東アジア最古の天文図とも言われる天文図が描かれています。68星座約350個の星が金箔とそれらを結ぶ朱線で表現されています。
 これらの壁画は青龍や白虎の一部が石面から浮き上がっていること、他の部分も劣化と生物被害の進行が止められないことから、全面取り外しを行うことが決定され、 平成16年より順次取り外しを進められています。現在までに天文図を除き確認されていた画像は取り出されて、修復作業が行われています。取り出された画像は、青龍、白虎、 朱雀、玄武の四神、子、丑、寅、午、戌、亥の十二支像です。ただし、午のように表面を覆った泥に転写された状態で辰、巳、申の三像の存在が期待されています。


戻る |  このページのトップへ