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保存科学研究センター 概要

 保存科学研究センターは、文化財の保存科学・修復技術に関する調査・研究を行うナショナルセンターとしての役割を担うことを目的として設立されました。当センターでは科学的な方法を用いて、文化財を取り巻く環境の調査や文化財の材料及び構造に関する調査を行うことで、文化財の保存に役立つ新たな知見の発信を目指しています。また修復のために、それぞれの文化財の制作技法やその置かれた環境と履歴を調査し、適切な修復材料・技法の改良、開発、評価およびメンテナンス手法に関する研究を行っています。これらの調査・研究は、博物館・美術館など文化財の所蔵者や文化財の保存修復の専門家と密接に連携しながら進めています。

保存環境研究室

 博物館・美術館などの展示・収蔵施設における文化財の劣化防止を目的として、温度湿度、光・空気汚染物質など環境中の劣化因子が文化財に与える影響を調べ、劣化を予防する研究を行っています。劣化因子の測定方法の基準化を図るとともに、研究の成果をもとに各施設の担当者と連携し、現場での環境モニタリングや改善方法に関する実証的な検討も行っています。

分析科学研究室

 様々な科学的分析手法によって文化財の構造・材質を調査し、劣化状態を含む文化財の物理的・化学的な特徴を明らかにする研究を行っています。X線や光を使った非破壊的な手法を中心に、各種小型可搬型機器を用いた調査方法の開発とその応用による総合研究を実現しています。

生物科学研究室

 生物による文化財の劣化機構の解明とその防除方法に関する調査研究を行っています。博物館や美術館などの保存展示環境にある文化財、歴史的建造物や古墳などの屋外にある文化財の生物劣化について調査研究を行うとともに、環境や人体への影響も視野に入れた対策の開発に力を入れています。

修復材料研究室

 伝統的材料を含む、従来文化財修復に使用されてきた修復材料の評価と改良、新しい修復材料の開発評価及び修復材料の適用方法の開発を行っています。併せて文化財修復に必要な伝統的技法の調査も行っています。

修復計画研究室

 文化財の持つ本質的な価値をできるだけ改変することなく次の世代へと伝えていくために、その文化財を構成する材料の特性を確認し、それが置かれている環境を調査し、適切な修復と保存の方針を策定していくための研究を行っています。これは、通常の環境においてだけではなく、自然災害等による文化財の被害を最小限に止めるための計画策定においても有効な研究です。

修復技術研究室(旧 近代文化遺産研究室)

 水害や火災によって被災した文化財や、近代以降に作られた大型構造物等、これまでほとんど経験したことのない資料の保存修復が必要になっています。これらに対応するために、新たな視点に基づいた保存修復復技術に関する研究に取り組んでいます。