民族や宗教、さまざまな価値観の違いに起因する軋轢が世界の各地で生じ続けている今日、文化的多様性を尊重し、相互理解を醸成することの重要性がますます高まっていると感じます。
生まれ育った町の風景や行事、地方や国の歴史を物語る遺跡や古建築、美術工芸やそれらを支える伝統技術など、ありとあらゆる文化遺産は私たち一人ひとりのアイデンティティと密接に関わりあっています。それらを大切に守り伝えるとともに、他の国々の人々が大切にしてきた文化遺産を人類共通のかけがえのない宝物としてとらえ、国際社会が手を携えてその保護にあたらなければならない、これが文化遺産国際協力という活動の基本的なコンセプトです。
私たち、文化遺産国際協力センターは、わが国が文化遺産の保存修復および調査研究の分野において実施する国際協力のためのナショナルセンターとして、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所に設置されています。その主な活動は、文化遺産に関する国際的情報の収集・研究や発信、世界の様々な地域での文化遺産保護への技術的支援の提供、保存修復に関する技術移転や人材育成、さらには文化遺産保護に関する国際的協働の推進など、多岐にわたります。
前身組織の発足以来すでに30年近くが経過しましたが、海外機関との共同研究を中心とした初期の段階から始まり、自然災害や紛争による被災文化遺産に対する緊急的支援を含む多面的協力事業の実施を通じて、様々な経験を蓄積するとともに協力のためのネットワークを形成してきました。
わが国が文化遺産保護分野で築いてきたノウハウを活かし、国内外の専門家や関係機関と密接な連携を図りつつ、引き続き効果的な事業実施に努めていく所存ですので、スタッフ一同を代表して、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
文化遺産の保護制度や施策に関する諸外国や国際機関の動向についての情報収集と分析は、我が国の文化財保護制度の将来を考える上でも、また日本が文化遺産保護の分野で国際協力を行っていく上でも重要です。また、各国の専門家・機関と協力してシンポジウム等を開催することを通じて、情報交換の活発化とともに国際協力のネットワークを広げていくことを目指しています。
アジア地域を中心とする世界の各地で、主に有形分野の文化遺産に関する調査研究や保存修復、さらには整備活用等を技術支援しています。文化遺産保護を担当する各国機関との直接協力のほか、ユネスコ等の国際機関やJICAをはじめとする他の国際協力機関が提供する枠組みを通じても、各種の協力事業を実施しており、保護水準向上のための継続的な支援のほか、自然災害や紛争といった要因で被災した文化遺産の復興支援にも積極的に取り組んでいます。いずれの事業においても、単にものを直して終わりではなく、保護のための技術移転や人材育成のプログラムを組み込むことによって、現地における持続的保護システムの構築を支援しています。また、海外に所在する日本美術品に関しても、重要作品の修復や修理技術に関する研修などを通じて、その価値の普及と保護の強化を図っています。
国際情報研究室長 金井 健 (建築学)アソシエイトフェロー 松浦 一之介 (考古学・景観保護)研究補佐員 藤澤 綾乃 (考古学)事務補佐員 柄澤 真子 (日本近世史)
保存計画研究室長 友田 正彦 (建築学)主任研究員 安倍 雅史 (考古学)研究員 淺田 なつみ (建築学)アソシエイトフェロー 山田 綾乃 (考古学)研究補佐員 柴田 みな (建築意匠)研究補佐員 髙橋 奈緒 (建築学)研究補佐員 長尾 琢磨 (考古学)
技術支援研究室長 加藤 雅人 (製紙科学)主任研究員 前川 佳文 (壁画保存修復)アソシエイトフェロー 牛窪 彩絢 (宗教学)アソシエイトフェロー 大川 柚佳 (西洋絵画保存修復・修復倫理)アソシエイトフェロー 片渕 奈美香 (染織品保存科学)アソシエイトフェロー 清水 綾子 (日本絵画修復)
文化遺産国際協力コンソーシアム事務局
事務局長(兼務) 友田 正彦 (建築学)(兼務) 金井 健 (建築学)アソシエイトフェロー 邱 君妮 (博物館学)アソシエイトフェロー 藤井 郁乃 (保護制度・世界遺産学・ジオパーク)アソシエイトフェロー 前田 康記 (建築学・歴史的建造物保全)事務補佐員 廣野 都未 (日本仏教美術史)