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所蔵資料紹介
『第一回特別展覧会目録、第二回特別展覧会目録〔合本〕』東京帝室博物館 全ページ表示pdf:17.3MB ▲ 文化財情報資料部 ▲ 東文研トップ ▲ Dept.English TOP |
『第一回特別展覧会目録、第二回特別展覧会目録〔合本〕』東京帝室博物館:1900年パリ万国博覧会で開催された日本古美術展覧会の帰朝展覧会の目録 本資料は表紙の墨書と1ページ目の説明が示すように1900年パリ万国博覧会で開催された日本古美術展覧会の出品作品を、パリ万博終了後、日本で2回に分けて展観した展覧会の目録である。この古美術展については『臨時博覧会事務局報告 上』(農商務省 1902年p831-881)に詳しい。それによれば、1897年に有栖川宮が英皇即位60年祭に参加した帰途、フランスを訪れ、同国の外務大臣に日本の古美術品をパリ万博に出品するよう懇請されたため日本側で審議し、「是が為に特に一館を建築して本邦美術の沿革を示すに足る優秀の品類を歴史的に展列することに決定」(『臨時博覧会事務局報告 上』 p836)したという。展示作品の選定には日本美術協会の協力を仰ぎ、所蔵者との出品交渉には曾根荒助(1849-1910)博覧会総裁をはじめ博覧会事務局員が尽力した。目録が示すように、御物を含め、著名な社寺や個人所蔵家から総計381点が集められた。優れた美術品を多数海外に輸送することを危惧する声もある中、これらの美術品は85箱に収容され、御物を納めた箱その他7箱はパリ万博事務館長・林忠正(1853-1906)が自ら携えてパリに渡った。他は3便に分けてそれぞれ万博事務官のパリ出張の際にクーリエとなって輸送した。
展示館として法隆寺金堂を模した建物が、パリ万博の日本展示場が割り振られたトロカデロの会場に、フランスで調達した材料で建てられた。館内は間口24メートル、奥行き18メートル、天井は格天井として龍鳳花の模様で彩り、床は画瓦を敷き詰めたという。1900年5月5日から10月31日までの会期中、展示替えが数回行われ、本展入場希望者のみに事務局が観覧券を配って入館させる一方、フランス元老院や美術学校関係者には特別券を配布するなどして自由に展観させた。 同博覧会の事務局報告には「本邦の古美術を斯くまで多数に一箇所に集合したることは古来殆ど曾てあらざるの盛挙にして、況や之を海外に輸送するが如きは又容易に望むべからざるの事業とす。然れども之に由て我美術の真相を世界に発表し、海外人士をして一層本邦の美術を敬慕するの念を起こさしめたるは勿論、延て本邦文化の由来する所甚だ深く且遠きを知らしめたるの効實に大なるものありしを疑わず」(同上p879)とある。 本目録の説明にあるように、これだけの優品が集まるのは貴重な機会であったため、国内でも公開することとなり、帝室博物館で1901年4月15日から5月5日までを第1回目、5月21日から6月10日までを第2回目として展覧会が開催された。 本目録には図がないために作品の特定が難しいが、京都の北野神社から出品された「第四五号 天神縁起 信實筆」「第四六号 同 光起筆」や高山寺所蔵の「第五五号 獣戯画巻 鳥羽僧正筆」等、推定できるものも多数ある。個々の作品の公開履歴を物語るだけでなく、海外における日本美術品イメージの形成などにも関わる貴重な資料である。 |