序
近年の日本近代美術の研究は、国内にとどまらず、アジア、欧米の研究者の関心をあつめ、多様な視点から考究され、さらに深められている。とくに、実証的な研究にあたっては、基礎資料の重要性が、ひろく認識されていることはいうまでもない。こうした状況をうけて、東京文化財研究所では、その前身である東京国立文化財研究所として、これまで『明治期美術展 覧会出品目録』(平成六年)、『内国勧業博覧会美術品出品目録』(平成八年)、『明治期万国博覧会美術品出品目録』( 平成九年)、を継続的に公刊し、研究に寄与することにつとめてきた。 このたび、これまでの基礎資料集成の連環として、大正期の主要な美術団体展の出品目録をデータ化し、編集した『大正 期美術展覧会出品目録』を刊行することとなった。もとより、時代区分としての「大正期」という呼称については、議論の あるところでもあるが、明治四十年に創設された文部省美術展覧会という公設展に対し、大正三年にはじまる再興日本美術 院、二科会などの在野の美術団体が、数多く結成され、それらを舞台に個性的で、多彩な美術作品が生まれた時代であった ことは、おおむね認められるであろう。本編編集にあたっては、こうした認識のもとに、明治末年から、昭和初年までの絵 画(日本画、洋画)、版画、彫刻の主要な美術団体と、東京勧業博覧会をはじめとする博覧会出品の美術作品を網羅するこ ととした。すでに、同時代の作家、作品、および美術団体については、個別的に研究がすすめられ、また雑誌、出品目録等 の資料の復刻などもおこなわれるようになった現状にあって、美術団体を網羅し、データ化することで、多様な美術界の動 向を追いながら、検証できる本書の意義はけっして少なくないとおもわれる。 なお、資料の調査収集と編集にあたっては、昨年四月の独立行政法人化と組織の改編により、美術部第二研究室から黒田 記念近代現代美術研究室となった同室が継続して担当してきたが、前三書の刊行時以上に、多くの機関と研究者の方々から 多大なご協力とご助力をいただきました。心から感謝申し上げるとともに、本書が、これからの日本近代美術の研究に益す ることを、切に願ってやまない。 目次
序
凡例 謝辞 大正期美術展覧会出品一覧 文部省美術展覧会〔明治四〇~大正七年〕 帝国美術院展覧会〔大正八~昭和五年〕 国画玉成会〔明治四〇年~〕 日本彫刻会〔明治四〇~大正七年〕 仮面会(ル・マスク)〔明治四四~四五年〕 光風会〔明治四五~昭和五年〕 フュウザン会〔大正元~二年〕 草土社〔大正四~一一年〕 再興日本美術院〔大正三~昭和五年〕 二科会〔大正三~昭和五年〕 赤曜会〔大正三~五年〕 大阪美術展〔大正三~五年〕 珊瑚会〔大正四~十三年〕 金鈴社〔大正五~一一年〕 国画創作協会〔大正七~昭和三年〕 新樹社〔昭和三~六年〕 日本創作版画協会〔大正七~昭和六年〕 東台彫塑会〔大正八~十四年〕 中央美術展〔大正九~昭和四年〕 新興大和絵会〔大正一〇~昭和六年〕 曠原社〔大正一〇~十三年〕 春陽会〔大正一一~昭和五年〕 アクション〔大正一一~十三年〕 大阪市美術協会展覧会〔大正一一~一五年〕 円鳥会〔大正十二~昭和三年〕 マヴォ〔大正十二~十三年〕 白日会〔大正十二~昭和五年〕 復興記念同彫塑展〔大正十三年〕 一九三〇年協会展〔大正一五~昭和五年〕 聖徳太子奉讃美術展覧会〔大正一五・昭和五年〕 東京勧業博覧会〔明治四〇年〕 東京大正博覧会〔大正三年〕 平和記念東京博覧会〔大正一一年〕 大正期美術展覧会出品作家一覧 出品作家一覧 (収録展覧会)
東京勧業博覧会、文部省美術展覧会、国画玉成会、日本彫刻会、仮面会、光風会、フュウザン会、東京大正博覧会、二科会、再興日本美術院、赤曜会、大阪美術展、珊瑚会、草土社、金鈴社、国画創作協会、日本創作版画協会、帝国美術院美術展覧会、中央美術展、新興大和絵会、東台彫塑会、平和記念東京博覧会、春陽会、曠原社、円鳥会、マヴォ、アクション、白日会、復興記念合同彫塑展、大阪市美術協会展、1930年協会、聖徳太子奉賛展覧会、新樹社
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