3月17日
松澤宥アーカイブズに関する研究会
木内真由美、古家満葉(長野県立美術館)
「生誕100年松澤宥展:美術館による調査研究から展覧会開催まで」
長野県立美術館(旧・長野県信濃美術館)では、2016年に下諏訪町にある松澤宥邸に調査を開始して以降、継続的に松澤宥資料を調査し、2022年2月2日から生誕100年展を開催することとなった。本発表では、調査研究が展覧会としてどのように活用されたかについて報告したい。まずは、資料群ごとに、調査から展示への反映の手法と課題を概観する。特に、「言語による美術」と松澤が呼称した言葉を用いた印刷物については、整理した作品の一部を紹介すると共に、カタロギング作業における課題を考察したい。
井上絵美子(ニューヨーク市立大学ハンターカレッジ校、オンラインでの参加)
「松澤宥とラテン・アメリカ美術の交流についてーCAyC(Centro de Arte y Comunicación / 芸術とコミュニケーションのセンター)資料を中心に」
松澤宥は、日本ではヨーロッパや北アメリカの美術の紹介が主流となっていた1970年代当時、異例なことにラテン・アメリカ諸国の美術家たちとの交流を積極的に行った。なかでも特筆すべきなのが松澤が1974年と1977年に展示を行った、アルゼンチンのCAyCである。CAyCは自身の芸術思想を広める実践のひとつとして頻繁に発行していたガセティラ(ニュース・レター)を定期的に松澤に送付していた。このガセティラは松澤のアーカイヴの中でも一定の割合を占める貴重資料となっている。本発表ではCAyCの活動を紹介しながら、この資料の分析を通じて松澤とCAyCとの接点について探ってみたい。また、アルゼンチンの他、ブラジルやチリなどからの資料にも触れ、松澤とラテン・アメリカ美術の交流の実相の一部を明らかにする。
橘川英規(東京文化財研究所)
「松澤宥によるアーカイブ・プロジェクトData Center for Contemporary Art (DCCA) について」
発表者は、松澤宥が生成・収集した資料群(松澤宥アーカイブズ)に基づき、表現者たちの人的ネットワークに関する研究を進めている。松澤は、1970年代にアーカイブ・プロジェクト「Data
Center for Contemporary Art
(DCCA)」に取り組み、同時代の西欧、東欧、北米、南米などを活動拠点とするアーティスト、あるいはアーティスト・グループによるメール・アート、刊行物などを数多く収集した。DCCAにより編成されたこの資料群は、現代においても、日本国内では類例のないアーカイブズといえる。本発表では、DCCA資料の概要といくつかの個別の資料を紹介するとともに、松澤のDCCA構想とこれに至る経緯、そしてこれらから見いだせる、当時の表現活動のありようについて考察したい。
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