「赤外線撮影(近赤外線撮影)」では、対象物に近赤外線を照射して撮影します。近赤外線を吸収するものは黒く、反射するものは白く記録されます。例えば赤外線を吸収する「炭素」は下描きに用いられる木炭などに多く含まれることから、近赤外線写真では表面からは分からない下描きの線や、描き直した跡などをとらえることができます。
欄干や雪見障子からなる縦横の秩序を強調した構図が、勢いのある線によって下描きされていたことがわかります。舞妓は、右手の描き方などに若干の変更が見られるものの、下描き時点でほぼ完成作に近いポーズが描かれていたようです。一方で、完成した油彩画では画面の右手前側から舞妓と視線を交わしているように見える女中は、雪見障子の下描きの上に描かれたことがわかります。