ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

ページ
98/120

このページは 「鉄構造物の保存と修復」日本語版 の電子ブックに掲載されている98ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

表4-5:リベット施工を実施するために検討された内容(参考:愛媛県南予地方局大洲土木事務所・四国建設コンサルタント株式会社(2011)、『交橋第15号測の1他(主)長浜中村線他設計委託業務第3編長浜大橋施工費用足場施工手順火床の移動冬季施工リベット生産補修設計報告書』、p.1-16。)一班で4~5人編成となり、一般的な高力ボルト接合と比べ約9倍程度の施工費が必要1火床や鉸鋲箇所での足場不足や若干の改良を現地で施工箇所ごとに行う必要はあるが、基本的に一般的な補修足場で施工可能2片側ずつの施工であれば車道3m・歩道1mの確保は可能3下面側は80cmのクリアランスが必要4足場高が60cmしか確保できない場合、効率は下がるが、施工毎に足場板や単管をずらしスパッタシートで養生すれば施工可能同径間は同時期に施工(施工時期が変われば、施工費用と工期が大幅に増加する場合がある)1火床は人力で移動可能2移動時は警備員による誘導など冬季施工でも問題はない1リベットは受注生産するため、製作に1ヶ月ほど要する2工程上余裕が無い場合は、鋲の長さを現場で調整して切断加工を行うため予備本数が必要となる。(20%程度のロス計上が必要)【保存修理工事の概要】構造部材が複雑に入り組んでいる箇所や建設時に工場などにて鉸鋲された部位の腐食リベットや置き換えられた高力ボルトはリベットへの交換を断念した(写真4-42,43)が、鉸鋲可能な位置にある腐食リベットや高力ボルトの多くは交換された。腐食が進行しているリベット孔に対しては、φ19mmとφ22mmのリベットが適宜使い分けられ、300本を超えるリベットが鉸鋲された。また、今回の工事では、第7径間の拡幅工事も併せて実施され、拡幅のために付加された部材の接合には高力ボルトが用いられ(写真4-44)、リベット接合部と高力ボルト接合部の違いが明確に区分された。【所見】リベットが腐食するたびに高力ボルトに置き換えられていくことで、歴史的な価値が失われていくことを危惧し、リベットによる補修を実施することで、歴史的価値が保持された。平成以降、歴史的価値の回復を目的にリベットへの取替が実施された橋梁は平成23年(2011)11月から翌年4月に実施された若戸大橋の補修工事や同年21年(2009)4月から23年1月に実施された旧筑後川橋梁の事例など数例のみに留まっていることからも大変意義深い事例と言える。また、新設された拡幅部に関しては高力ボルトを用いることで修理目的の違いや建設年代の違いなどを示している点は、部材や施工技術の価値を示す上でも重要な方法と考える。写真4-42:現場施工が難しかったため、現状のままとされた高力ボルト(黄色の枠内のボルト)(3)技術的な価値の保存-蒸気機関車12号(国鉄160形蒸気機関車)製造:明治4年(1871・1872)製造会社:シャープ・スチュアート社(Sharp, Stewart & Co.Atlas Works)製主要諸元:形式1B形タンク式、長さ7,995mm所在地:愛知県犬山市字内山1番地所有者:公益財団法人明治村【保存の経緯】蒸気機関車12号(以下、12号機関車とする。)は、明治7年(1874)に新橋-横浜間の増備用としてイギリスから輸入写真4-43:拡幅された桁部分の接合は高力ボルトを用い、当初材と区別している写真4-44:上弦材で取替が難しかった高力ボルト(矢印の左側はリベット、右側は高力ボルト。レーシングバーを接合しているボルトをリベットへ取替ることが困難だったため)写真4-45:蒸気機関車12号の現状96第6章鉄構造物の保存と修復に関する事例集