ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

設計:上部構造(C・ポーナル)重要文化財指定:平成20年(2008)12月2日指定基準:(三)歴史的価値の高いもの所在地:岐阜県大垣市新開町、岐阜県安八郡安八町西結所有者:大垣市写真4-26:構造補強後の状況【保存修理工事の経緯】本橋(写真4-28)は、幹線鉄道として国内で最初に完成した東海道線において、唯一建設時の位置に現存する橋梁である。上部構造は、イギリス人技術者の設計に基づき、使用されている鋼材は英国で製作され、明治19年(1886)に竣工した。明治41年(1908)には、東海道線の複線化に伴い、新橋が建設され、鉄道橋としての運用が終了した。昭和35年(1960)写真4-28:修理工事後の第5径間のトラス写真4-27:RC梁で補強されたケーブル固定基礎部を追加する必要はないと判断された。図4-5にバイパス補強部を図示した。補強を必要とするケーブルは、既存ソケット部と鉄管(心棒)部を結ぶケーブルであり、主塔部に懸かるケーブルとは別ケーブルになる。補強前のケーブルが固定されている基礎部は、玉石とコンクリートが混ざった粗石コンクリートで成形され、ケーブルの延長線とほぼ一致する位置に設置された鉄管の心棒にケーブルを巻いた状態で固定されていた。そのため、アンカー部のケーブルを抱き込む形で補強部材が設置され、ケーブルにかかる張力の軽減がはかられた。ケーブルの張力を補強部材で受けるため、上流・下流それぞれのケーブル群の外側に荷重をバイパスさせるためのロッドを設置し、既存のケーブルソケットの前面には、長さが調整されたシムプレートと前面梁を設置し、後面には、RC梁や後面梁を設置し、バイパスさせるロッドと連結させている(写真4-26,27)。写真4-29:腐食が進行した部材を補強している状況(青枠部分に付加)【所見】本橋では、当初、取替やケーブルの追加が検討されていたが、劣化範囲を特定することにより、部分補強で対応可能なことが明らかになった。このように、劣化状況、劣化範囲を特定していくことで、修理内容や範囲を最小限の介入に抑えることが可能になる。写真4-30:付加された補強部材の設置状況(3)最小限の介入による劣化部の補強-旧揖斐川橋梁竣工:明治19年(1886)構造形式:鉄製五連トラス桁橋、橋長325.1m、橋台二基及び橋脚四基付写真4-31:支承部に発生した腐食箇所への補修状況(部材交換せずにケレン・塗装を実施し現状保存)92第6章鉄構造物の保存と修復に関する事例集