ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

【補強の概要】下弦材と斜材を接合する格点部を新設部材で補強し、下弦材と斜材のバイパス化が実施された(写真4-22,23)、(図4-4)。オリジナルの下弦材は、アイバー2枚を格点でピン結合し、オリジナルの斜材は、平鋼1枚または2枚で構成されている。補強部材は、オリジナルの下弦材の両外側にH型の断面の下弦材が追加され、斜材の補強はオリジナルの斜材を挟み込む形で設置され、テンションボルトで圧着されている。新設された補強部材と既存部材は緩み止めのダブルナットを用いた軸長の長い普通ボルトで結合されている。バイパス補強された下弦材は、プレート1枚で接合され、引張力のみを伝えるヒンジ構造となっており、既存のピン結合を踏襲する形で補強が実施されている。【所見】森村橋の構造補強では、単純プラットトラスの形態に合わせたバイパス補強が実施されている。このトラスはピン継手で構成されているが、構造補強により剛継手に変更された。ただし、部材の取替ではなく新たに補強部材を追加する方法が取られたため、オリジナル部材の多くは残された。このように暫定的かつ簡易的な手法としてオリジナル部材を活かす補強方法とし参考になる事例である。所在地:岐阜県美濃市曽代、同曽代地先、同前野所有者:美濃市【保存修理工事の経緯】本橋は、国内最古の近代吊橋であり、主ケーブルは建設当時に輸入されたものが使用されている(写真4-24)。維持管理としてケーブルへの注油が行われているが、昭和58年(1983)以降の修理工事履歴は不明であり、ケーブルの腐食が進行している状況であった。そのため、橋としての機能を維持するため、ケーブルに対する補修が検討された。【補強計画】当初の計画では、劣化したケーブルを桃介橋の修理と同様に交換することが検討されたが、建設当初から継続使用されているケーブルの歴史・材料的な価値が評価され、保存可能な方法が検討された。検討された方法の中にはケーブルの追加などの案もあったが、ケーブルの劣化状況、劣化範囲を調査した結果、右岸側の上流・下流それぞれのケーブルを固定する基礎部との境界付近のケーブルの劣化が顕著であり(写真4-25)、その部分にかかる応力を軽減させることができれば、ケーブル(2)材料を保存するためのバイパス補強-美濃橋竣工:大正5年(1916)構造形式:鋼製補剛吊橋、橋長113.0m、幅員3.1m、コンクリート造アンカーレイジ2基を含む設計:戸谷亥名蔵(岐阜県技師)が中心重要文化財指定:平成15年5月30日指定基準:(二)技術的に優秀なもの、(三)歴史的価値の高いもの既存ケーブル固定基礎前面梁シムプレート既存ロッド既存ソケット既存ケーブル新設ロッド写真4-24:美濃橋全景鉄管(心棒)RC梁後面梁補強:ケーブルバイパス補強写真4-25:張力を軽減させたいケーブル図4-5:ケーブルバイパス補強部の名称91