ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

NEXCO:腐食対策腐食損傷の調査腐食損傷や塗膜劣化がNO発見されたか?YES形態、原因、進行程度の調査レタン樹脂塗装で機能的には十分であると判断されている。また、塗り替え工事においても、腐食が進行している部分のみケレンされ、塗り直しが実施される場合も少なくない。さらに、ケレンの種類も1種ケレンだけではなく、2種、3種と腐食の度合いに合わせてケレンの仕様が決定されている。一方、NEXCOでは、鋼材に錆が発生していた場合には1種ケレンが選択されることが多く、1種ケレンが実施された場合にはふっ素樹脂で塗装されている。3種ケレンが実施された場合には、期待する耐久性向上はみられないと考えられ、既存塗膜がふっ素系でなければ、ポリウレタン樹脂で塗装されている。性能評価耐荷性能を満足するか?YESNO補強工法の選定・炭素繊維シート接着工法・鋼板当て板工法・部材取替え工法補強対策現在の防食使用で性能を保てるか?YESNO防食仕様の変更・重防食塗装系への変更・金属溶射への変更・耐候性鋼の塗装仕様への変更塗膜劣化以外に錆が見受けられるか?YESNO塗り替え塗装塗り替え塗装・素地調整程度1種・素地調整程度3種記録、経過観察【所見】材料の価値などにも十分な配慮が求められる文化財指定された鉄構造物では、腐食が進行している部材であっても取替を選択することが難しい場合がある。そのため、腐食が進行する前に1種ケレンを実施し、ふっ素樹脂による材料の保存をはかることも十分考えられる。しかし、JR側が指摘するように錆を完全に落としきることは難しく、塗装に関しても塗りムラや微細な孔などが塗り残される可能性がある。維持管理されてきた橋梁であっても経年の劣化により、部材同士の隙間や複雑な接合部などで錆が発生するため、1種ケレンを実施しても錆を完全に除去できる可能性は低い。そうしたことを考慮すると、構造物の特性、劣化状態に合わせて工法を選択することが効果的な保存方法ではないかと考える。4.2.劣化した部材の補修方法(1)劣化した部材の補修方法の選択-名古屋市東山植物園温室前館竣工:昭和11年(1936)構造形式:鉄骨造、ガラス葺建築面積:595.98m2設計:名古屋市土木部建築課重要文化財指定:平成18年(2006)12月19日指定基準:(三)歴史的価値の高いもの所在地:愛知県名古屋市千種区田代町字瓶杁1番41所有者:名古屋市工事期間:平成25年(2013)11月1日?図4-3:腐食対策のフロー(参考:東日本高速道路株式会社・中日本高速道路株式会社・西日本高速道路株式会社(2017)、『設計要領第二集橋梁保全編』、p.3-15。)1種ケレンが実施され、(図4-3)ふっ素樹脂塗料に置き換えられている。【まとめ】JRが参照する『塗装指針』では、ふっ素樹脂の耐久年数を満たすまでの素地調整は難しいと判断されているため、ポリウ写真4-16:工事時の温室前館内観88第6章鉄構造物の保存と修復に関する事例集