ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

写真4-3:落下防止対策として設置された阻水扉上部の補強材想起させることができる価値を重視しつつ、一般来場者の入室を制限している北側2門の阻水扉は現状維持とされた(写真4-1)。一方で、将来的に腐食の進行により阻水扉が失われる可能性があることや一般来場者の見学範囲に含まれる南側2門については、安全に公開するため、泥を除去し、サンドブラストを用いて錆を除去した上で、変性エポキシ樹脂塗装による保存とされた(写真4-2)。さらに、喞筒室1階開口部(床面下)に設置した吊桁に揚重用の吊り金具を2箇所新設し、阻水扉の落下防止対策も講じられた(写真4-3)。写真4-5:新設された基礎と補強部材(仮設鉄骨橋)の据付状況(出典:(公財)文化財建造物保存技術協会、『重要文化財(建造物)旧美歎水源地水道施設保存修理工事報告書』、p.139。)【所見】従来の工事では、腐食した材料に対して、洗浄、ケレン、再塗装が実施されるが、阻水扉では、腐食の進行速度に対して板厚が十分に残存していることが確認され、かつ地下の環境(湿度等)の改善が図られたため、4門ある内の2門は現状維持のまま保存されることになった。この事例のように腐食速度と母材の状態を正確に把握することができれば、より良い保存方法が確立されるまで、必要最低限の処置に留めることができる。写真4-6:炭素繊維入り無機系防錆剤の塗布状況(右側が塗布後、左側が塗布前の状態(出典:(公財)文化財建造物保存技術協会(2018)、『重要文化財(建造物)旧美歎水源地水道施設保存修理工事報告書』、p.136。)(2)腐食した部材の保存-旧美歎水源地水道施設下流側管理橋竣工:大正7年(1918)構造形式:I型鋼による鋼製二連桁橋、水道管を転用した橋脚付の3スパン橋、北側に送水管を伴う。床版は鉄筋コンクリート造、アスファルト舗装。重要文化財指定:平成19年(2007)6年18日指定基準:(三)歴史的価値の高いもの所在地:鳥取県鳥取市国府町美歎、上町所有者:鳥取市工事期間:平成25年(2013)4月?平成30年(2018)3月写真4-7:修理前の橋桁の状態(出典:(公財)文化財建造物保存技術協会(2018)、『重要文化財(建造物)旧美歎水源地水道施設保存修理工事報告書』、p.136。)写真4-4:下流側管理橋全景写真4-8:修理後の橋桁の状態(出典:(公財)文化財建造物保存技術協会(2018)、『重要文化財(建造物)旧美歎水源地水道施設保存修理工事報告書』、p.136。)84第6章鉄構造物の保存と修復に関する事例集