ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

肉盛り溶接平面図錆断面図錆とが難しく施工環境が十分に整わない現場がある。そうした現場では、雨天、強風日、低温日には溶接不具合を引き起こす恐れがあるため溶接作業を行うことができない場合がある。また、火気を扱う作業となるため、防炎対策なども必要になる9。ケレン溶接方法にも様々な方法があり、大きくは融接、圧接、ろう接の3つに分類することができる。融接は接合部を加熱・溶融肉盛り溶接肉盛り溶接し、凝固させる接合方法、圧接は接合部に熱エネルギーを加えたのち、機械的な圧力で接合させる方法、ろう接は、接合材の隙間に母材よりも融点の低いろう材を溶融し、充填させる接合方法である10。この3つの溶接方法の中でも、融接は、溶接添板補修平面図錆断面図錆する部材の厚みがあり接合強度を必要とする場合に用いられる。そのため、橋梁や建築物などの建造物を溶接補修する際に選択される。融接する際には様々な方法が検討されるが、溶ケレン接部の仕上げを綺麗に残したい場合や母材にかかる熱量を減らしたい場合などに合わせて適宜方法を変える必要がある11。また、溶接作業を行うことで、溶接箇所に余盛りやビードと添板添板呼ばれる溶接の痕跡が残る(写真3-2)。この溶接跡に対する考え方は二分しており、意匠性を損なうため削り取るべきという考え方と保存修理工事においては補修の痕跡として残すべきとの考え方で割れている。突合せ溶接平面図錆断面図錆【課題に対する事例紹介:劣化した部材の補修方法の選択-名古屋市東山植物園温室前館(p.88 ? )】切断切断3.4.構造補強に関する現状の課題鉄構造物の構造補強は主に、応力が集中する部位の強度を高める強度補強方法と地震力を低減させる地震力低減方法に溶接後補材溶接後補材大別することができる。以下に各補強方法について補強事例の多い橋梁を中心に紹介し、合わせて現状の課題も記述する。図3-2:腐食した部材に対する補修方法のイメージ(1)強度補強方法橋梁における強度補強方法は、床版補強、床組補強、主構造の増設、断面補強、新たな構造部材の増設などが挙げられる12。文化財へ指定・登録されている鉄構造物では、文化財としての価値や材料の可逆性などが考慮され、既存部材への変更を最小限に抑えた当て板による断面の補強(図3-3)や新たな構造部材の増設などで構造補強される場合が多い。写真3-2:余盛り溶接箇所補強:当て板図3-3:当て板による補強の一例(参考:土木学会鋼構造委員会歴史的鋼橋の補修・補強に関する調査小委員会編(2006)、『鋼構造シリーズ14歴史的鋼橋の補修・補強マニュアル』、p.90。)80第6章鉄構造物の保存と修復に関する事例集