ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

腐食湿食全面腐食異種金属接触腐食二種類の異なる金属を接触させることで発生する腐食。電位が高い金属がカソード反応、低い金属がアノード反応となる。局部腐食酸素濃淡腐食同種の金属であっても、接している環境が異なる場合、電位差が生じ腐食電池が形成される。残存酸素濃度などが要因のひとつ。乾食高温酸化高温腐食孔食局部的に塩化物イオンが濃縮されると、不動態皮膜が不安定になり局部的に皮膜が失われ、針穴のような孔ができる。ステンレス鋼は孔食が発生する代表的な材料。隙間腐食金属と金属、金属と非金属の隙間で生じる局部腐食。ステンレス鋼では、不動態皮膜を常に溶解・生成を繰り返しており、生成する際に酸素を消費するため、隙間内部と外部とで残存酸素濃度差が生じ、腐食電池が形成される。粒界腐食ステンレス鋼が代表的な材料であるが、溶接や熱処理を行うことで、腐食性が高まり、熱処理影響部の粒界で腐食がおこる。脱成分腐食合金の特定の成分もしくは金属組織上の一つの相だけが溶出する選択的な腐食。鋳鉄の黒鉛化腐食なども脱成分腐食の一つ。環境脆化環境の影響により、金属が脆くなること。腐食疲労引張強さ以下の応力であっても、繰り返し加え続けると破断に至る。腐食環境下では、同じ応力でも破断に至る回数が少なくなる。応力腐食割れ材料要因(鋭敏化、結晶粒界と不純物、特定の金属組織など)、環境要因(溶存酸素等の酸化物、塩化物イオン、アンモニアなど)、応力要因(引張応力、溶接残留応力、加工残留応力など)の3要素が関与する割れを伴う腐食。黄銅の時季割れ、オーステナイト系ステンレス銅の粒界腐食割れ、炭素鋼のアルカリ脆性割れ、水素脆性割れ、硫化物割れなどがある。水素脆性割れ拡散した原子状水素が金属の空孔内で結合して、水素ガスになることによって金属を脆化させる。原子状水素が金属原子同士の結合を弱めることでも脆化がすすむ。図2-1:代表的な腐食の形態(参考:藤井哲雄(2017)、『最新オールカラー図解錆・腐食・防食のすべてがわかる辞典』、株式会社ナツメ社。)腐食は、単独の金属の全面で生じる腐食であり、電位の低い原子がアノードになり、その周囲の原子がカソードとなり腐食電池を形成することで腐食が生じる。アノードとなった鉄原子は電子を放出して鉄イオンとなり溶出し、酸素消費型の腐食となる。この反応によって、それぞれの原子の状態が変化し、再び、電位の低い原子がアノード、その周囲の原子がカソードとなり、腐食が繰り返される。そのため、全面腐食ではアノードとカソードの位置が終始移動し続ける特徴を持っている1。一方の局部腐食は、全面腐食とは異なり、アノードとカソードの位置は固定されている。特定の部分だけがアノードとなり腐食するため、全面腐食と比べて腐食の進行が速いことが多く、狭い範囲に腐食電流が集中して、激しい腐食になる場合がある(写真2-1)。その他にも、局部腐食では、特定の部分が損耗していくだけではなく、金属が脆くなり割れへと発展する腐食などが含まれている。割れを伴う腐食には、部材にかかる引張力や残留応力が大きく影響している。金属が腐食環境下にある場合、引張強75